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(3)住民案づくり 国の基準クリアが条件
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長田・御菅地区から
 大阪市中央区のオフィス街。地下鉄谷町四丁目に近いビル四階のコンサルタント「アーバン・プランニング研究所」に、ぽつり、ぽつりと封筒が届く。

 区画整理事業が計画される御蔵通五、六丁目と、御蔵通、菅原通三、四丁目の住民からだ。アンケートを求めているのは、二つの地域のまちづくり協議会だが、集計は、研究所が行っていた。

 アンケートの住所をみると、神戸市内が八割、市外が二割。姫路、加古川、宝塚など兵庫県内のほか、香川、徳島などもある。

 締め切りは九月だった。だが、いまでも回収は五割足らず。資料が山積みされたオフィスで、北條蓮英所長は「まちづくり協議会方式は、積み上げ型だから、大変なエネルギーがいる」と話した。

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 協議会結成はそれぞれ四月、六月と比較的早かった。プランナーは、アーバン・プランニング研究所と最初から決まっていた。御菅地区の街づくりの歴史は、十七年前までさかのぼる。同研究所は、当初からかかわってきた。

 工場跡地に住宅ができ、平成元年、市とまちづくり協定が結ばれた。地域福祉センターも完成した。しかし、密集長屋の再生、市場・商店街の活性化など、どの下町もが抱える大きな課題は残っていた。まちづくりが足踏みしているところに震災が起きた。

 「肝心の暮らしの場の改善ができなかった。いわばアンコの部分が問題だった」と、北條所長は言う。

 街区の内側は二メートル前後の路地が網の目に延び、大正から昭和初期の長屋などが並んでいた。平均十三坪(四十三平方メートル)の細長い敷地。当時は一定の居住水準を確保していたが、改造につれ危険度が増した。

 トイレの水洗化で、くみ取りに必要だった裏路地がつぶされ、台所など家屋の拡張に使われた。平屋が二階建てになった例もある。空間は狭く、火災時に燃え広がる構造になった。

 「都市の負の遺産」。老朽化した木造家屋の密集は、そうも指摘される。

 区画整理では、道路は六メートル以上、東西二カ所の公園は二千五百平方メートル以上が、国の補助の条件という。何らかの減歩(土地の提供)がなければ、用地は生み出せない。が、住民の抵抗は強い。

 「市が一方的に絵を描くつもりはない。事業計画案まで、まだ三合目の段階。みんなが考えてほしい」。同地区を担当する市区画整理部の深川勝利課長は話しながらも、言葉を続けた。「国の基準を満たさないとカネは出ない。市にはカネはない」

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 十月四日、御蔵通五、六丁目のまちづくり協議会の役員が集まった。督促状も出したが、アンケート回収が芳しくないのが気がかりだ。

 白崎弘二会長は「行政が何とかしてくれるわけではない。とにかく減歩を少なくしよう」と、住民本位の計画づくりを強調した。

 役員は口々に話した。「どのくらいの家賃なら帰ってこれるかを調べ、行政とかけあおう」「借家の入居の割合を高め、受け入れられるよう要望しよう」

 アンケートの後、まちづくりは構想の作成、事業計画案へと進む。今年中に全体集会を開き、構想をまとめる方針が、ともかくもその場で決まった。

1995/10/18
 

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