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(12)計画一変、過密懸念も 「新都市」の調和どう図るか
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 「坪単価百五十万円。このラインをどうクリアするか」。JR大阪駅に近い超高層ビルの十階で連夜、検討が続いていた。

 兵庫県西宮市の人工島・西宮浜の民間住宅分譲を担当する「西宮マリナシティ開発」。住宅メーカーの出向社員ら三十五人が、資材調達、企画、建設、そして販売、すべての分野で経費圧縮策を練っている。

 「できるだけ値段は抑えるよう行政から言われている。復興住宅だから当然だが、『安かろう悪かろう』にはできない。街のイメージとかけ離れたものはできない」と、同社の伊丹谷五郎常務。

 坪単価百五十万は、八十平方メートルの分譲マンションで三千五百万円を意味する。伊丹谷常務は「とても利益は望めない。赤を出さず、三千五百万に近づけるのが精いっぱい」とも言う。

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 大量の住宅建設へ-。市街地にまとまった土地は乏しく、自治体が着目したのは人工島などの「新都市」だった。

 西宮浜三千五百戸、芦屋市の南芦屋浜三千戸、神戸市臨海部の東部新都心一万戸・などである。

 西宮浜の「マリナシティ」は当初、週末や長期休暇の際に利用するリゾート型マンションやホテル、商業施設などを計画していた。南端には千三百艇を収容する日本最大のヨットハーバーが完成、近郊型リゾート都市を目指していた。

 バブル崩壊後、県と西宮市、西宮マリナシティ開発で見直しが行われ、さらに震災で一転した。戸数は当初の約六倍。西宮マリナシティ開発が受け持つ民間千七百五十戸や公社、公団に加え、県、市営住宅八百戸も建つ。

 「震災後、阪神間でこれだけ大規模な住宅建設は初めて。将来に残る街を」と伊丹谷常務。第一期四百六十戸の着工は六月に迫り、県、市も「復興住宅第一号という街の位置づけができ、ようやく企業も踏ん切りをつけてくれた」と話す。

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 兵庫県企業庁は今年初め、民間ヨットハーバー併設のリゾートタウンを目指していた南芦屋浜計画で、新たな土地利用計画を策定している。

 「芦屋らしい街づくり」「親水性ある街づくり」という従来の目標に、「高齢化社会に対応した街づくり」を加えた。

 ヨット所有者を対象にした艇庫付き百戸の分譲住宅は全国で初めて。海辺に一戸建てが連なり、北側に県、市営住宅八百戸が建つ。今秋には復興住宅第一期分が着工の予定だ。

 県、芦屋市は「島全体の調和をコントロールしていくため、新たに専門家の意見を聞いていく」とするが、震災は、街の調和という新たな課題を突きつけた。

 二月下旬、神戸・東部新都心をテーマにした日本建築学会のシンポジウムが、神戸大学で開かれた。

 計画を手がける神戸市の幹部職員は、区画整理による土地の整備と建物建設を同時に進めなければならない難しさを打ち明けた。

 WHO神戸センターなど集積を目指す医療・福祉施設、防災関連施設と住宅との兼ね合いもある。「超過密都市になる」と学者らは懸念を漏らした。

 「二年後には復興住宅の入居が始まる。その時点で街全体の計画はまだ進行中。震災前からの既存の計画とどうリンクさせるか。街全体のコミュニティーをどう考えるか」と市幹部。走りながらの作業が続く。

1996/3/24

 

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