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(5)安い家賃は実現できるか 国の支援 注視する地元
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 二月二十八日午後、兵庫県庁会議室で、建設、自治、通産、国土など各省庁の幹部が、貝原知事ら県幹部と向かい合っていた。

 復興の具体的な課題を協議する初めての「政府・地元地方自治体協議会」。首相の諮問機関だった政府の阪神・淡路復興委員会は一年の任期を終えて解散、協議会は、二月中旬現地入りした橋本首相の発案で設けられた。

 「被災者が希望する地域に、負担し得る家賃の住宅を確保する責任がある」。そんな知事のあいさつの後、約一時間の会議は非公開で行われた。テーマの大半は、家賃の軽減策だった。

 会議後、記者会見した三井康壽・国土庁事務次官(阪神・淡路復興対策本部事務局長)は「国として(家賃低減の)財政支援をすることになるだろうが、具体的な手法はこれから。地元の実態調査の結果を踏まえて相談する」と述べたが、こんなやり取りもあったという。

-国側- 家賃対策の対象者は、高齢者や低所得者になるのではないか。
-県側- 従来の住宅政策の範囲にとどまらず、仮設住宅を早急に解消するという公共的な観点から幅広く検討してほしい。

    ◆

 兵庫県が受け付けた災害復興賃貸住宅の入居希望登録(約三万四千世帯)で、震災前の状況が浮かび上がる。

 家賃は二万円未満一一%▽二万円台二一%▽三万円台二四%。四万円未満だった被災者は、半数以上の五六%になる。年収は三百万円未満が五三%に及び、震災で集中的に被害を受けたのが、高齢の年金生活者だったことを示している。

 「家賃は震災直後から検討してきた。復興基金で対応できないかとも考えたが、個人への助成は難しいと実現しなかった」と柴田高博・県都市住宅部長。

 国はすでに、復興公営住宅の建設費補助率をアップし、家賃を引き下げる家賃対策補助制度の拡充などを図ってきた。

 しかし、それらを加味しても、震災前の家賃に程遠い。県の試算によると、神戸・阪神間では、最も安い災害公営住宅の単身者用(四十平方メートル)で三万八千円から四万円という。

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 「被災者の支払い能力に応じた家賃」。これが、県や神戸市などが目指す家賃対策である。

 震災前から県や市町はそれぞれ独自に公営住宅家賃減免制度を持っており、今後の国の支援策として、神戸市は「この制度への補助も考えられる」とする。

 同市の場合、六十五歳以上の年金生活者なら、一人暮らしで年収二百五十九万六千円以下が減免対象。年金、給与、事業所得者ごとに対象やランクを設け、減免後の家賃は二万五千円から六千円の幅になる。

 「被災者は高齢者が多く、対象は膨れ上がる。国の財政支援なしでは現行の減免制度さえ実施できない」と、同市住宅局は言う。

 公営以外に、民間や公団なども軽減対象に含めることができるのか、額はどうか。三井次官が「対応は実態調査待ち」とした県の仮設全世帯の調査は三月末にまとまる。

 七日、住宅問題をテーマに東京で与党震災復興プロジェクトチームの会合が開かれた。建設、自治、厚生の各省幹部も出席した。

 家賃軽減策について建設省は「協議は調査結果を踏まえて」との態度を崩さず、会合は、踏み込んだ議論にならなかった。

1996/3/16
 

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