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(2)住民に不安と期待交 入居期限2年は実態に合うのか
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 兵庫県加古川市のJR東加古川駅北東に広がる東加古川仮設住宅。自治会役員の八木五郎さん(38)は、道で会う高齢者に入居期限を聞かれることが多くなった。

 「ここつぶすんやろ。はよう出なあかんな。でも行くとこないしなあ」
 八木さんは、決まって答える。「心配せんでええ。おりたいだけおったら。わしもおるから」

 自治会副会長の花田勝代さん(56)は、神戸市職員の言葉が支えになっているという。

 二月に団地のふれあいセンターで行われた同市の巡回相談。花田さんは「二年たったら強制的に追い出すんですか」と、職員に問いかけた。

 「受け皿もなく出て行けとは人道的にできないでしょう」
 「でも建物が壊れたら」
 「なんとか直して、住めるような状態にします」

    ◆

 同仮設住宅は、兵庫県が国鉄清算事業団から約十万平方メートルを借りて建設した。八百六十七世帯、千九百人が生活し、六十五歳以上の高齢者は三四%に及ぶ。

 同事業団所有の仮設住宅用地は、神戸、西宮などにも計九カ所あるが、東加古川は最大規模である。

 「仮設は建築完成から二年」。建築基準法は、期限はこう定める。建物基礎の強度が一応の根拠だ。二年を超し、移転先がない場合などについて、兵庫県はまだ考えを示していない。

 東加古川の住民が、不安を募らせるのは、法的期限とは別に、清算事業団の事情があるためだ。

 JR新大阪駅に近い同事業団近畿支社。大林祥泰副支社長は「期限延長するなら土地を兵庫県に買ってもらわなければならない。いずれにせよ、この夏までに判断がほしい」と話す。

 同事業団によると、用地は旧国鉄の債務返済のため一九九七年度末までに売却しなければならない。仮設住宅建設地は、九五、九六年度の予算計上は見送ったが、九七年度は売却収支を計上する必要がある。

 東加古川には、もともと加古川副都心住宅ゾーンとして、事業団が民間デベロッパーと共同開発する計画で、継続して話し合いは進めているという。

    ◆

 長崎・雲仙普賢岳は災害が継続したにしろ、仮設住宅解消まで四年半かかった。北海道・奥尻島は二年を超す今も解消されてない。

 「二年は住民には何の意味もない。災害の実態に則していない」と八木さん。仮設に移ってきた当時、同じ避難所の住民が、集まっていることを知った。市の配慮を感じ、仮設期限切れの問題もむちゃはしまい、との期待がどこかにある。

 二月十四日、菅厚生大臣は衆院予算委で、「公営住宅入居が原則だが、できない場合、仮設を継続して使える手立てを考えなければならない」と発言。厚生省保護課は「県の方針を見守っている状態」と話す。

 兵庫県は、住民の意向など実態調査を進め、三月末までにまとめる。清算事業団など期限つき用地の問題も、全体的な二年後の問題も、調査結果を待たないと方針は出せないとする。

 四万八千戸の仮設住宅は、六百三十四カ所に散らばる。解消の前に、仮設間の移転、集約はどうなのか。

 東加古川仮設住宅自治会会長の石井浩司さん(44)は「移転集約は仕方ないと考えている。住民としても協力していきたいが、それには十分な協議期間が必要」とクギを刺すが、その集約にも、まだ説明はない。

1996/3/12
 

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