六日の兵庫県会建設常任委員会。議員が「復興基金の利用はどうしてそんなに少ないのか」とただした。当局側は、困ったような表情になった。
阪神・淡路大震災復興基金は六千億円。年二百七十億円の運用益で、さまざまな被災者支援の事業を行う。中心は六割を占める住宅対策だが、利用は思わしくない。
例えば、昨年十二月にスタートしたダブルローンの助成策。県は三万件の利用を見込んでいるが、二月末現在の受け付けはわずか九件しかない。
委員会で、山崎靖生・県建築指導課長が答弁に立った。「(住宅対策は)住宅金融公庫融資などの利用者に限っているが、民間が低金利となったほか、各企業も社員向けに低利融資の制度を設けている。公庫以外に分散している。引き続き、基金のPRに努めたい」
ダブルローン助成について県は、発足して日が浅いこと、申請が新規ローン受け取り後になるため、利用増はまだ先になることなども理由に挙げる。
◆
基金は昨年四月に発足した。六千億円は県と神戸市が出した。自治体には利子負担がかかるが、利子の大部分を国が地方交付税で補てんする。
基金で行う事業内容の検討は、発足に先立つ二月から始まった。国が補助する仕組みから、自治省は県にクギを刺したという。
「個人給付的なことは、いくら言ってこられてもできない。それは義援金の範ちゅうのことだ」
本来なら全国で使う交付金を被災地に特別に回している、とのニュアンスをにじませ、「他府県から、いろいろ言われるとつらい」とも漏らした。
現在、基金の住宅助成は十六項目にのぼるが、利用のしにくさなど、不満は当初からくすぶっていた。
「同じ被災者なのに、対象にならないなんておかしい」と、住宅の再建、購入に利子補給する二つの事業には批判が寄せられる。
神戸市内の場合、市が重点復興地域に指定した二十四カ所の被災者は、どこに住宅を建てても補助が出るが、地域外の被災者はニュータウンに家を建てる時にしか対象にならない。利子補給の期間もケースによって、五年、十年、と差がある。
県都市政策課は「ニュータウンへの誘導を図るなど、復興に向け、よりよいまちづくりを進める政策的な優遇措置という考え方」と説明するが、同じ被災者でありながら、対象にすらならないケースが多い。
利子補給という間接的支援のため、ローンさえ組めない被災者の支援策はなく、住宅再建助成の受け付けは、二月末で八十九件、購入のそれは七十三件である。
◆
「状況の変化に応じて見直さなくてはならない。そのことは、基金発足当時から意識していた」と県職員は話す。
今、焦点になっている家賃軽減策への基金活用はどうか。担当者は「当初から課題と考えていたが、仮設住宅の必要戸数さえ、はっきりしていない時期で、結局、国との協議までに至らなかった」と振り返り、「建設者側に支援はできても、基金からの個々人への家賃補助は難しいだろう」と言う。
現状に応じた見直しが迫られる基金の使い道や規模。増額された雲仙普賢岳の基金のケースを次回で見てみたい。
1996/3/17