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「暗い絵」野間宏著
「暗い絵」野間宏著

 「草もなく木もなく実りもなく吹きすさぶ雪風が荒涼として吹き過ぎる。はるか高い丘のあたりは雲にかくれた黒い日に焦げ…」とつづく。冒頭、えんえん62行、4ページにおよぶ絵の描写。私はいまも正確にそらんじることができる。1953年刊「市民文庫」シリーズ(河出書房)の一冊。往時の粗い紙質を証明するように、本の角は摩耗し、中身は茶褐色へと姿を変え、しかし、一文字として色あせぬ粘液質の言葉を放ちつづける。

 「百姓ブリューゲル」と呼ばれた16世紀フランドル(現在のベルギー)の画家ブリューゲルの作品群を野間宏は小説「暗い絵」に抽象化し、主人公深見進介の心象風景に重ねた。むろんのこと、ブリューゲルに「暗い絵」の表題作があるわけではない。深見進介の心髄を揺さぶるのはブリューゲル作品のすべてである。

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2015/5/3
 

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