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無人販売所の中にトマトを並べる田中孝樹さん=淡路市尾崎
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無人販売所の中にトマトを並べる田中孝樹さん=淡路市尾崎
裏側に顔のデザインがある真っ赤な無人販売所=淡路市尾崎
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裏側に顔のデザインがある真っ赤な無人販売所=淡路市尾崎

 真っ赤に塗られた壁面に、丸い目玉が二つ-。畑に囲まれた兵庫県淡路市尾崎の市道沿いに、目を引く小屋がある。中には、色違いのトマトがずらり。無人販売所だ。農家の田中孝樹さん(43)が、今年2月に始めた。大玉やミニなど約10種類を日替わりで出している。

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 最初は、お試し感覚だったという。観光施設や飲食店など向けに出荷する他に、売る方法はないかと考えていた。野菜かごを裏返した上に200グラムの袋詰めを5袋置くと、毎日2~3袋が売れていった。そこで小屋を作り、外観に力を入れた。「思わず車を降りて写真を撮りたくなる見た目」にした。

 そのかいもあってか、今年6月は無人販売が月の売り上げの3分の1を占め、利用者の多くは地元住民という。充実感に加え、「少しの工夫で人が集まる。情報を発信し、交換する小さなメディアになるのではないか」とも感じている。

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 田中さんは、実は、トマト嫌いだった。奈良県香芝市出身。大阪や滋賀、京都などの家電量販店で携帯電話を販売する派遣社員をしていた。転職を検討した10年ほど前、新規就農者を取り上げたテレビ番組を見て作り手になろうと決め、大阪府内にある農業大学校の講座に通った。

 講座の中で、初めて完熟トマトを口にした。フルーツのような甘さに衝撃を受けた。この体験が忘れられず、トマト栽培を選んだ。講座修了後、大手の人材サービス企業が淡路島で新規就農者を支援する事業に参加した。

 2017年に畑を借り、農家として独立した。現在、ビニールハウス計約16アールで、年間約4トンを収穫している。よそにないものに取り組もうと、イタリアで作られた品種を多く栽培している。

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 無人販売所には、利用者がトマトの感想や、どこから買いに来たかを書き込むノートを置いている。さらに、誰でも書き込める掲示板を置き、地域イベントのちらしを自由に置いてもらうよう、整える予定。

 「ネットの時代に、言葉や情報を交わす場所としてアナログな拠点があったら面白い。ここに来れば地元の地域のことがわかるという基地にできれば」。トマトプラスアルファの提供を目指す。(中村有沙)

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