毎年のように風水害をもたらす台風。こうした中、頭痛や関節痛、めまいなど体調不良を及ぼす「気象病」が注目されている。低気圧の接近に伴う気圧の変化が要因で、潜在的な患者数は1000万人とも。2005年、日本で初めて「気象病・天気痛外来」を愛知医科大学病院痛みセンター内に開いた内科医の佐藤純さん(@tall_jun)に聞いた。
東日本各地に浸水被害をもたらした台風19号が太平洋側に抜けた13日、佐藤さんはツイッターを更新。<皆さんの安否が大変気になっています。気圧や温度の急変もあり、心理的緊張が解けたことで、頭痛や体調不良がこれからスタートすることもあります。身体の痛み、体調不良が長引いてしまうこともあります。どうぞお大事になさってください>
気象病とは、天気の影響による体の不調の総称。気象病は古くから確認されている疾患だが、一般への認知が始まったのは比較的最近のこと。文部科学省編さん「学術用語集 気象学編」(1987年3月)には掲載され、本格的なメカニズム研究は1990年ごろからという。
人の体は、気圧が上下すると、内耳が変化に対応しようとする。その結果、交感神経の活動が活発になり、心拍数や血圧が上がり、元からある頭痛や気分障害などが顕著にあらわれる。症状としては、頭痛やめまい、倦怠感などさまざまだ。実際、大型台風や低気圧が接近すると、ツイッター上には、<低気圧で異様に眠い><低気圧のせいか体調悪い><頭痛い><ずっと寝てた>といった投稿が見受けられる。
■患者数は1000万人
気象病との上手な付き合い方を佐藤さんに聞いた。
ー患者数は?
「日本国内では推定1000万人を超えると考えています」
ー現代病ですか?
「ギリシャ時代からあるといわれていますが、現代人は自律神経が乱れがちで弱くなっているため、新型うつ病と同じように気象病も増加傾向にあります」
ー台風19号通過後も不調が長引く人がいるというツイートを見ました。
「理由は2つあります。今回の台風のように、気圧の変化が大きいと不調が長引きます。さらに低気圧から元の気圧に戻るときの気圧の上昇により発症する人がいるからです」
■就寝前スマホはNG
ー自分自身が気象病かどうか見分けるには。
「『痛み日記』をつけると痛みが客観的に把握できます。まずは1カ月間、毎日の天気と気圧、体のどこに不調が出たかを書き留めてみてください。最寄りのかかりつけ医に相談する際も、痛み日記や不調を書き留めたメモの用意があると、医師に伝えやすいでしょう」
ー日常生活の中で予防法は?
「耳の感受性を変えるための耳のマッサージがいいでしょう。『くるくる耳マッサージ』をおすすめしています。ほかには、朝食を必ず食べる、汗をかく程度の運動、入浴、睡眠が大切です。貧血気味の人は、低気圧の影響を受けやすいので、貧血対策に有効な栄養素ビタミンB1系(お米やパンなどの穀類、豚肉、ナッツ類など)を摂取しましょう。ミカンやイチゴ、キウイなどのビタミンCもおすすめです。特に寝る前のスマホはNGです。スマホからの光は刺激が強く、交感神経が活発化し眠れなくなります」
大型台風やゲリラ豪雨など、年々気候の変動が大きくなる日本。天気図とにらめっこする生活は気が滅入りそう。症状とどう付き合えばいいのか。佐藤さんは心強いメッセージをくれた。
「(苦しんでいるのは)自分ひとりではないよ。天気が良くなれば症状も良くなります。ポジティブな気持ちで備えましょう」
■佐藤さん推奨「くるくる耳マッサージ」の手順(朝、昼、晩の1日3回)
(1)両耳を軽くつまみ、上、下、横に5秒ずつ引っ張る
(2)そのまま軽く横に引っ張りながら、後ろに5回ゆっくりとまわす
(3)耳を内側に包むように折り曲げて、5秒間キープする
(4)耳をふさぐように手のひらで耳全体を覆い、後ろに円を描くようゆっくりと5回まわす
■佐藤さんのホームページ「天気痛ドクター 佐藤純」http://www.tenkitsu-dr.com/
(ネクスト編集部 金井かおる)