将棋の歴史にまた一つ、新たな記録が刻まれた。28日、将棋の王位戦7番勝負を5連覇した藤井聡太王位(22)=竜王、名人、王座、棋王、王将、棋聖。自身二つ目の永世称号となる「永世王位」の資格を最年少で獲得し、「対局に臨む上で意識していなかったが、得られたことはうれしく思っている」と語った。
同日夜、対局会場で開かれた会見には「永世王位」と揮毫(きごう)した色紙を手に登場。シリーズ全体は「苦しい将棋が多かった」とし、「王位戦を通じて成長できた」と振り返った。激戦の疲れも見えたが、有馬温泉の金泉と銀泉の「どちらが好きか」と問われると、屈託のない笑顔を見せた。
各棋戦でタイトル獲得「連続5期」など厳しい基準を満たした棋士の功績をたたえる「永世称号」。多くの棋士はタイトルに届かないまま棋界を去る。そのタイトルを複数積み重ねることは驚くべき偉業だ。これまで成し遂げたのは歴代、藤井を含め5人しかいない。それを藤井は永世棋聖に続き今回、永世二冠を「22歳1カ月」で達成した。
本棋戦では記憶に残る名局も生まれた。相手はタイトル獲得通算31期、永世竜王、永世棋王の資格を持つ渡辺明九段(40)だ。第1局で千日手が成立。指し直し局は日本将棋連盟の棋譜中継で、AI(人工知能)が終盤、渡辺の勝率を「100%」と評価する局面から藤井が大逆転した。第3局も「終盤が非常に複雑な将棋だったので、印象に残っています」と振り返る混戦だった。(小林伸哉)
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