将棋のプロ棋士養成機関「奨励会」の三段まで昇段した経験を持つ中七海女流三段(26)=神戸市出身=は19日、大阪府高槻市の関西将棋会館で、第52期女流名人戦予選1回戦に臨み、先手の川又咲紀女流初段(28)に92手までで勝利。女流棋士としてのデビュー戦を白星で飾った。
本局は振り駒の結果、と金が3枚出たため、先手番となった川又が得意の「中飛車」で臨んだ。中は戦法に「こだわりはない」といい、居飛車でも指すが、今回は「三間飛車」で応じて「相振り飛車」の戦いとなった。川又の仕掛けに対して、中は「自信がなかった」というが、落ち着いた指し回しで優勢に持ち込み、見事に寄せ切った。
中は「勝ててよかったです」と語り、今後の目標を問われると「あまり先のことは考えられないので、目の前の対局を頑張りたい」。女流名人戦予選2回戦で戦う加藤桃子女流四段(29)について「本格的な居飛車党で、タイトルも取られていて強い」とし、気を引き締めた。
川又は「中さんと指せることを、すごく光栄に思っていた」といい「中さんはバランス型。一手一手読みが深くて、力の差を感じました」とたたえた。
中は2011年に奨励会に入会。加古川市の井上慶太九段(60)門下。20年10月から、棋士への最終関門「奨励会三段リーグ」に参加したが、今年9月、四段昇段(プロ入り)がかなわぬまま年齢制限を迎えて退会。11月1日付で女流棋士に転向し、規定に従って「女流三段」となった。
これまで奨励会で三段まで昇段した女性は、福間香奈女流五冠(32)、西山朋佳女流三冠(29)、中の3人しかいない。
女流タイトルの八つを福間と西山が分け合う女流棋士の世界で、中の活躍に注目が集まっている。
(小林伸哉)