観客の拍手に応える神戸市室内管弦楽団=16日、神戸市中央区楠町4、神戸文化ホール(撮影・鈴木雅之)
観客の拍手に応える神戸市室内管弦楽団=16日、神戸市中央区楠町4、神戸文化ホール(撮影・鈴木雅之)

■低かった知名度と集客力

 ステージに立った楽団員たちの眼前に、見たことのない光景が広がった。神戸文化ホールの大ホール(2043席)で、1707人もの聴衆が自分たちを見つめている。ある楽団員は「今日を絶対に忘れることはない」と目を潤ませた。

 今月16日の神戸市室内管弦楽団定期演奏会。その2カ月前に年間8千万円超の補助金廃止という市の方針が表面化して以来、初の演奏会だった。

 「応援したくて」「一度聴いてみようかなと」。思い思いの観客に向け、楽団員は一心に弦を弾き、管に息を吹き込んだ。

 補助金が収入の7割を占める楽団は、補助金が廃止されると存続が危ぶまれる。報道で取り上げられる機会が増え、楽団を運営する神戸市民文化振興財団は「この状況で集客できないようではだめ。楽団の行く末は市民に考えてもらいたい」と、今後の活動のてこにしたいと定めた公演だった。

    ◇

 497人、566人、563人、566人。ここ数年の定期演奏会1公演あたりの平均来場者数だ。神戸市が補助金廃止の理由に挙げた一つは、楽団の集客力の弱さだった。

 市は三宮で新・神戸文化ホールを建設している。新・大ホール(1816席)の開館予定は2年後の2028年6月ごろに迫る。久元喜造市長は現状の集客数を比べ、「相当埋まってもらわないと困る」「文化芸術に対する公費の使い方の問題」と指摘した。

 神戸新聞は5月、双方向型報道「スクープラボ」で、楽団の補助金廃止に関するアンケートを実施。神戸市在住の回答者188人のうち、今春の報道以前から楽団を知っていたのは29%ほど。演奏会に行ったことが「ない」としたのは75%だった。回答者からは「プロを名乗るなら営業努力は当たり前では」「魅力をPRできていない」などの意見が出た。演奏会に行ったことが「ある」と答えた人は15%。「ない」の5分の1ほどにとどまるが、「私はアマチュアでバイオリンを弾いているが、プロは違うと感じた」「上質だった」「内容の割に料金が安かった」と、多くが満足していた。

    ◇

 市が補助金廃止の方針を通告した今年1月、財団は当初、楽団の「解散」を覚悟した。2月には、楽団員もほぼ決定事項のようにそれを聞いた。それから約3カ月。久元市長が「再考の余地はないわけではない」と発言したこともあり、楽団の行く末は「解散やむなし」から「夏までに検討」と、猶予を与えられた。

 賛否が渦巻く中で迎えた演奏会。来場者でごった返す会場を見た楽団員と財団スタッフは、互いに喜びをかみしめた。

 久元市長は5月28日の会見で「関係者の努力に敬意を表したい」としつつ「問題は楽団が持続可能かどうか。多くの方が足を運ぶ状況がこれからも続くかということ」とくぎを刺した。

 この数年、平均400~500人台の前で演奏してきた楽団員らは、3倍もの聴衆に「こんなに集まったのは初めて」と口々に語った。しかし、その言葉は裏返しの問いを呼び起こす。なぜこの光景はこれまで生まれなかったのか。

    ◇

 神戸市が創設して45年を迎えたプロオーケストラ「神戸市室内管弦楽団」が存亡の危機に立たされている。集客力に乏しく、収支改善が見られないとして、市は2027年度を最後に補助金支給を止める方針を決めた。存続か、解散か、別の道か。決断を迫られる楽団の周辺を取材した。(大盛周平、松本寿美子)

【神戸市室内管弦楽団】1981年に「神戸室内合奏団」として神戸市が設立。2016年から神戸市民文化振興財団が運営する。18年に管楽器奏者を加えて現在の名称に。歴代の音楽監督に故ゲルハルト・ボッセさんや故岡山潔さんら。21年からは世界的チェリストの鈴木秀美さんが務める。楽団員は現在26人。神戸文化ホール(神戸市中央区)専属団体で、23年から日本オーケストラ連盟準会員。

■ご意見をお寄せください

 神戸市室内管弦楽団への補助金廃止と楽団の存廃問題について、ご意見、ご感想をお寄せください。ファクスは078・360・5512、メールはbunka@kobe-np.co.jpへ。取材が可能な方は連絡先(電話、メールアドレスなど)とお名前を記してください。