戦後の神戸経済を切り開いたノーリツ創業者の太田敏郎さん=2004年、神戸市中央区
戦後の神戸経済を切り開いたノーリツ創業者の太田敏郎さん=2004年、神戸市中央区

 六甲の山並みに沿って走る阪急電車の車窓から見える高台のマンション。一室の窓にキャンバスが載ったイーゼル(画架)の影が映る。飛ぶように流れる風景でほんの一瞬、心がほどける情景だ。部屋の主は給湯器大手ノーリツ(神戸市中央区)の創業者太田敏郎。2020(令和2)年1月、92歳で死去したので没後4年9カ月余になる。背筋の伸びたたたずまいや誠実な物言いがよみがえる。

 1927(昭和2)年、姫路市に生まれ、旧制姫路中学(現姫路西高)、海軍兵学校卒。戦後、焼け跡の神戸で能率風呂商会を起業し、東証上場、従業員約6200人(連結)の大企業に育て上げた。神戸商工会議所副会頭、会頭代行を歴任。95年の阪神・淡路大震災で本社は倒壊したが、いち早く復旧させる一方、地域再生の旗振り役となった。ルミナリエの継続に尽力した姿は今も語り草だ。