兵庫県内の2023年度の野生鳥獣による農林業被害額は、前年度比11%減の4億1480万円(速報値)となり、2年連続で減少したことが県のまとめで分かった。防護柵の設置や捕獲強化といった対策により、ピークだった10年度の約9億7400万円からは半減した。ただ、被害に遭った農家にとっては営農意欲の減退や耕作放棄などの要因になっており、引き続き深刻な状況にある。
鳥獣別でみると、獣類では、シカの1億6700万円(前年度比6・2%増)、イノシシの1億120万円(35%減)と、上位2種で65%を占めた。アライグマが5710万円(9・1%増)で続いた。
県自然鳥獣共生課は、シカによる被害の増加の中身について、造林地でのスギやヒノキの苗木への食害を挙げた。併せて近年は、降雪量の減少によって生息範囲が拡大し、但馬北西部などで生息数や被害が増加している。
但馬、西播磨、淡路島の一部地域ではシカが木の皮や下草を食べ荒らすため、立木が枯れたり、下層植生が消失したりして、土壌の流出や虫の減少につながるなど生態系への被害も発生している。
一方、イノシシは、捕獲強化によって生息数自体が減少した。豚熱(CSF)感染により個体数が減った可能性も指摘している。
被害額の割合は大きくはないが、クマやサルは集落に出没して人身被害をもたらしているほか、遭遇する恐怖などから精神的被害も出ているという。県は市町と協力して集落周辺で柿などの食料の除去や、有害捕獲の許可を受けて駆除する取り組みなどを強化している。
一方、鳥類の被害は13・2%減の6880万円。最多のカラスが5280万円(14・8%減)だった。ヒヨドリは830万円で12・3%増加した。
県自然鳥獣共生課は「被害防止への取り組みをしっかり実施していく。獣害に強い集落をつくることで動物との共生を目指していきたい」としている。(三宅晃貴)