兵庫県の尼崎市役所に隣接する橘公園の噴水が8日、約15年ぶりに水しぶきを上げた。市の財政難によって長年、壊れたまま手つかずだったが、行財政改革(行革)が進み、修繕費用が捻出できるようになった。来年の市制110周年に向けて、後回しにしてきた事業や投資が少しずつ動き出している。(金 旻革)
噴水は同公園の入り口付近にあり直径約20メートル。公園の指定管理者「パークマネジメント尼崎」(同市)によると、動力モーターの取り換えやコンクリート塗装などの修繕に3年ほどかけて復活にこぎ着けた。今後は毎日午前10時~午後4時に稼働する。市幹部の一人は「やっと予算を回せるようになった」と話す。
市の財政は、2024年度の一般会計決算で見ると、実質収支は28億円で前年度から5億円増えた。借金に当たる市債残高は1644億円で、20年度と比べて626億円減少。将来の借金負担の重さを示す「将来負担比率」は07年度に217・2%で県内最悪レベルだったが、初めてゼロとなり、今後に必要な財源が確保できた。
市はかつて高度経済成長期に市税収入が増えた際、市営住宅や市民プールなど公共施設を相次いで建設。その後、バブル崩壊で法人税収が減り、阪神・淡路大震災が追い打ちをかけた。
03年度から「経営再建プログラム」に着手。職員数を減らし、全職員の給与をカットした。公共施設の統廃合のほか、敬老パスの有料化など市民サービスの削減にまで手を付けてきた。
約20年に及ぶ取り組みで、積極投資に踏み出すレベルに改善したという。23年度には未就学児の医療費完全無償化を実施し、25年度には妊婦健診の超音波検査(エコー検査)で公費助成を近隣市並みに拡充。阪神電鉄尼崎駅前の中央公園のリニューアルも完了した。過熱する人材獲得競争を受け、新規採用職員の基本給を阪神間の自治体でトップクラスに引き上げた。
市財政課は「行政水準や市民サービスが近隣市並みになってきた」とみる。ただ、生活保護などの扶助費は増え続け、物価高騰で行政経費の増加傾向が不安材料として付きまとい、「安定した税収を確保するためにもファミリー層に選ばれるまちを目指す必要がある」とした。