そろばん作りを体験する児童ら=小野東小学校
そろばん作りを体験する児童ら=小野東小学校

 そろばん生産量が全国の7割を占める小野市で全8小学校の3年生が特産品、播州そろばんの組み立てを体験している。各校を巡回する職人の指導を受け、10月21日までに390人がそろばん作りを体験する予定。完成した「マイそろばん」は算数の授業で使う。(坂本 勝)

 物作りを楽しみながら地場産業への関心を高めようと、播州算盤(そろばん)工芸品協同組合と播州算盤製造業組合が2001年から続け、24年目。今年は9月11日の小野東小学校(天神町)を皮切りに始まった。同校の3年生は98人と多く、両組合から11人が訪れて指導した。

 組み立て前に播州算盤工芸品協同組合の宮永信秀さん(41)が、そろばんの歴史を紹介した。そろばんは約500年前の室町時代、中国から長崎を経て広まり、滋賀県大津市にも伝わった。安土桃山時代、豊臣秀吉が三木城を攻めた際、大津に逃れた三木の住民がそろばんの技法を習得。地元に帰って製造を始めたのが播州そろばんの始まりだという。

 そろばんの製造工程を撮影した動画も視聴した。そろばん玉を一瞬のうちに削る機械の速さに児童は驚き、職人が23桁のひご竹に玉を一気に入れる名人技に「うそー」と声を上げた。

 児童は職人9人の下で班に分かれて組み立てに挑戦。ひご竹をかなづちで木に打ち込み、枠を作った後、15桁のひご竹にそろばん玉を一つずつ通し、職人の手を借りながら完成させた。

 宮永さんは児童の質問にも答え「職人は一丁一丁、魂を込めて作ったそろばんの目立たない内側に名前を入れる」「良いそろばんは玉がすっと動くがピタッと止まる」と話した。「播州そろばんは国の伝統的工芸品。職人と作った世界で一つだけのそろばんを大事に使って」と呼びかけた。

 岩崎煌生(こう)さん(9)は「2年生の時に『町たんけん』で地元の宮本そろばん工房に行った。今日作ったそろばんを早く使いたい」、菅野日和(ひより)さん(9)は「職人さんがみんなで分担して作っていると知り、いい勉強になった」と喜んだ。