柔道日本男子は6日、東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで強化合宿を報道陣に公開し、パリ五輪で2連覇を果たした66キロ級の阿部一二三(パーク24、神港学園高出身)は全日本選抜体重別選手権(4月5、6日・福岡国際センター)に出場する方針を明言した。世界選手権(6月・ブダペスト)代表を目指し「圧倒的な力の差を見せつける」と抱負を述べた。
27歳のエースは2028年ロサンゼルス五輪を見据え「休みすぎると、戻る時がしんどくなる。3連覇するために休んでる時間もない」。この日の合宿にはアゼルバイジャンなど海外勢が参加し、乱取りでは背負い投げなど担ぎ技を披露。「トップの選手がこれだけ集まることはなかなかない。充実している」と話した。
阿部は体重無差別で争う全日本選手権(4月29日・日本武道館)に五輪メダリストの推薦枠で挑戦する意向を示した。
■「若手には負けない」強気の姿勢健在
男子66キロ級の阿部が五輪3連覇へとスタートを切った。揺るぎない実績を誇り、この1年は充電期間と予想する関係者は少なくなかったが、4月の実戦復帰を明言。「練習がしっかりできていると心が充実する」。王者の風格を漂わせた。
畳での本格的な練習再開は年明け頃からだった。3年後のロサンゼルス五輪は30歳を超えた時期になり「疲労の抜け方や体重の落ち具合は年齢とともに変わる。3年かけて最高の状態をつくり上げたいし、3年かけないと勝てない」と早期の再出発の理由を語る。この緻密さと貪欲さこそが、阿部の強さの源だ。
2月には数々の激闘を繰り広げた4歳上の丸山城志郎が引退。「すごく嫌な存在だったけれども、城志郎先輩がいたから今の僕がある。本当に感謝している」と率直に話し、ファンを魅了した名勝負へ思いをはせた。
10代から第一線で活躍してきたエースも8月で28歳になる。同階級の国内トップ選手に年上はほぼいない。時の流れに驚きつつ「あくまで目指しているのはロスでの3連覇。そこでいかに進化した柔道を出せるか。若手には負けない」と強気の姿勢は健在。第一人者の自負を強烈ににじませ、新たなステージに突入する。
■引退の丸山城志郎に「感謝」
阿部は2月に現役を退いた好敵手の丸山城志郎について胸中を吐露した。
-丸山が引退した。
「城志郎先輩の存在がなかったら、ここまで来られていない。切磋琢磨(せっさたくま)してきた。(東京五輪代表)決定戦があったから、今の気持ちの強さがある。感謝している。(当時は)1カ月以上、寝てる時以外はトイレでもお風呂でもご飯を食べていても(丸山のことを)考えていた。地獄だった」
-丸山は引退記者会見で阿部の練習内容に興味を示していた。
「会見は(動画で)全部見させてもらった。思っていることは一緒だなと。僕も狂ったようにやっていた。今まではずっとバチバチで本当に目も合わせなかった。お互いに人生を懸けていたから、そうなる。やっと普通に接することができる」
-軽量級ながら体重無差別の全日本選手権に挑む理由は。
「一度は柔道家として立ってみたい舞台。軽量級の選手が出ているのを見て、僕も出たいなと思った。最初で最後のつもりで出たい。(過去に出場の)66キロ級以下の選手で一番多い勝ち数を目指したい」