三木市加佐のアームレスリングジム「鉄腕三木」に所属する会社員澤田和茂さん(同市大塚1)が、9月に茨城県であった「JAWA全日本アームレスリング選手権大会」で、左腕と右腕それぞれで優勝し、大会最優秀選手(MVP)に輝いた。左右両方で頂点に立ったのは、全7階級の王者でただ1人。チャーミングな笑顔とは裏腹に、最大60キロのダンベルを持ち上げる太い上腕が自慢の36歳が来年、世界に挑む。(小西隆久)
■鍛錬の日々「まだまだこれから」
アームレスリングとの出合いは、高校を卒業した18歳の時。中学生時代はサッカーJリーグ1部ヴィッセル神戸の下部組織に所属した澤田さんだったが、「自分にプロは無理」と見切り、子どもの指導者となった。
それでも心のどこかでもんもんとしていた。日本選手権で3階級制覇を達成した地元の先輩、戸川陽平さん(48)に憧れ、ジムの門をたたいた。
力には自信があり「すぐに強くなれる」と思った。だが、その甘い考えは圧倒的な強さを誇る先輩たちの豪腕にへし折られた。「才能型の選手」と戸川さんが評するように、めきめきと実力を付けたが、22歳の頃、厳しい練習の毎日に「遊びたい気持ちが勝ってしまった」という。
再びジムに戻ったのは2018年。30歳になっていた。仕事は酒の配達で、大瓶のビール1ダース入りケースを片手でひょいと持ち上げる。生ビール20リットルのたるも指2本だけで軽々と運ぶ。それでも週4日のトレーニングと週2日の実戦練習は欠かさない。「勝つために必要」だからだ。
昨年12月、JAWA全日本選手権、105キロ級のレフトハンド(左腕)で初めて優勝。そして今年9月、左右両方で栄冠をつかんだ。「レフトハンド(だけ)の優勝とは全く違ううれしさだった」と澤田さん。
ライトハンド(右腕)の決勝。相手に押され気味になり「どうにも動かせない」状態から一瞬で肩を大きく入れてなぎ倒した。「左腕と右腕では戦い方も考え方もまったく違う」といい「右はパワー、左はテクニックですかね」と照れくさそうにはにかむ。
戸川さんは「センスの塊。鋭い観察力で相手の弱点を見抜くのが早い」と舌を巻く。腕を組むまでの30秒間、試行錯誤を繰り返しながら「自分が有利になるように持っていく」。力の要となる親指の付け根部分の厚さは5センチ以上。素人なら手のひらを握っただけで威圧されてしまうほどだ。
世界選手権は来年9月。澤田さんは「努力しなければ勝てない。まだまだこれから」。60キロのダンベルを持ち上げる腕にパワーがみなぎる。

























