厳しい夏の暑さから身を守ろうと、日傘を使う男性が増えている。女性のアイテムというイメージが強かったが、酷暑によってニーズが急拡大。昨夏の3倍ペースで売れている百貨店もあり、購入者の多くが40~70代という。まだ「恥ずかしい」と使用をためらう声もあるものの、その快適さや熱中症予防の効果から、男性にとっても必需品となりつつある。(山岸洋介)
■「女性のアイテム」もう古い?
「あまりに暑い日が続いたから、約1カ月前にネット通販で買った。ぐっと涼しくなるので、もう手放せません」
神戸で最高気温32・5度となり、強い日差しが照りつけた今月17日。JR元町駅前で紺色の日傘を差していた男性会社員(44)は、うれしそうに効果を語った。
通勤や外回り営業で使うといい、「汗だくになる不快さに比べれば、荷物が一つ増えることなんて少しも気にならない」。社内でも日傘デビューする上司や同僚の男性が目立つという。「女性のものと思ってきたので差すのに抵抗があったけど、今は全然ない。もっと早く知りたかった」
■シェア急拡大
大丸神戸店(神戸市中央区)では、1階の婦人洋品売り場に男性向けの日傘コーナーを設け、50~60本を陳列している。
7月16日までの1カ月半で約250本が売れ、前年同期の3倍ペースで推移。女性向けを含むパラソル全体の売り上げに占めるシェアも、昨年の約2%から約6%に伸びている。
人気なのはかばんに入れて持ち運びやすい2段、3段の折り畳みタイプで、広げたときの直径が55~60センチの傘。「大きい日陰」を求める人は直径65センチの長傘タイプを買っていくという。
どの商品も晴雨兼用で、携行しておけば日差しにも雨にも対応できる。主力商品の価格は1万2千~1万3千円。遮光率やUVカット率が99%を超える商品もあり、最軽量のタイプは約150グラムという。
取材直前にも、30代くらいの男性が汗だくで「今すぐ使いたい」と買いに来たという。売り場の担当者は「『気になっているんだけど、今回は下見だけ』というお客さまもまだ多い。男性のマストアイテムになれば、今後も売れ行きが伸びそう」と予測する。
一方、アウトドアメーカーのモンベルでは、晴雨兼用で使える軽量傘(約6千円)の売り切れが続出。公式サイトのオンラインショップでも品切れが続き、人気ぶりを示している。
■男性の所有率は?
では、どれくらいの男性が日傘を持っているのだろうか。民間気象会社「ウェザーニューズ」が2022年に同社のスマホアプリ利用者に対して行った調査では、男性の10%が「日傘を持っている」と回答した。19年の調査で「日傘を使っている」と答えた男性は4%。単純比較はできないが、着実に浸透していることがうかがえる。
日傘は直射日光を遮り、体感温度を3~7度下げる効果があるとされる。また同社によると、真夏に日光を浴びると頭付近の温度は55度近くまで上昇するが、日傘を使えば40度ほどに下がるという。
まもなく近畿地方も梅雨が明ける見込みで、今年は観測史上最も暑かった昨年を上回る猛暑になる可能性もある。メーカーも男性向けの商品を充実させており、落ち着いた色合いだけでなく、カジュアルなデザインのものも増加。ビジネスやプライベートで使い分ける楽しみもありそうだ。