ニシキキンカメムシの成虫(左)と終齢幼虫(右)。成虫の体長は2センチ足らず
ニシキキンカメムシの成虫(左)と終齢幼虫(右)。成虫の体長は2センチ足らず

 美しい昆虫といえばタマムシやハンミョウが有名ですが、虫に詳しい方ならわが国カメムシ中の最美麗種といわれるニシキキンカメムシをそこへ列することに異存はないでしょう。そのニシキキンカメムシが2022年、53年ぶりに兵庫県で発見され、このほど発見の経緯や生息環境などの知見が昆虫雑誌「きべりはむし」に公表されました。

 発見者は佐用町昆虫館スタッフの末宗安之(すえむねやすし)さんです。近隣の岡山県に生息していて半世紀前に上郡町で記録がある。となると佐用町にもいるかもしれない。いたらいいな、と目標をもって情報を集め、希望をもって自分の足で踏査し、ついに発見! という絵に描いたような発見の経過でした。

 発見直後の同年6月、「まだ秘密」の生きた個体が佐用町昆虫館のスタッフに披露されました。「おお、これはすごい!」と数人の大人が歓声を上げながらスマホを向け、手に乗せていました。憧れていた虫に出合って目を輝かせる瞬間は、大人も子どもも同じです。

 ひとしきり楽しんだ後、この情報をどう扱うか意見交換しました。これを秘密にしておくのはもったいないし、昆虫館の目玉にもなりそうです。しかし場所を公開して人が殺到すると地元の迷惑になりますし、個体群の存続に悪影響があるかもしれません。

 末宗さんはその後も現地調査を続け、ニシキキンカメムシの生息基盤は脆弱(ぜいじゃく)なものではないことがわかりました。食樹であるツゲの自生地は限られていますが、シカはツゲを好まないためシカ食害が顕著な地域ではツゲの株は増えており、ニシキキンカメムシもそれに伴って増えている可能性もありそうです。

 そこで少しずつ情報公開することとし、まずは地元に知ってもらうところから始めることにしました。最初に披露したのは23年5月、佐用町内の保育園の子どもたちに対してでした。このきれいな虫を手に取った子どもたちは「にじいろガイダ(ガイダは佐用町など西播地方におけるカメムシの地域呼称)」と名付け、以後これを愛称としました。

 7月には地元自治会で説明し、佐用町の広報誌にも情報が掲載されました。併せて昆虫館での飼育展示も始めました。今年には手作りの「かぶりもの」も登場し、ますます人気者となりつつあります。

 ニシキキンカメムシをご覧になりたい方は佐用町昆虫館を訪問ください。今はキラキラした幼虫たちがたくさんいます。開館は4月から10月の土日祝日だけで、小さな施設のため予約制となっています。ひとはくで展示の予定はありません。