工具の配備や競技大会の開催など、災害時の救助態勢の底上げに努める兵庫県警災害対策課の松本博之さん=県警本部
工具の配備や競技大会の開催など、災害時の救助態勢の底上げに努める兵庫県警災害対策課の松本博之さん=県警本部

 「県民の命を守るのが警察ちゃうんか」。兵庫県警災害対策課次席の松本博之さん(53)=明石市=は、29年前、神戸の街で被災者からぶつけられた怒声を今も覚えている。阪神・淡路大震災の初動対応で人命救助に当たったが、資機材もノウハウもなく、力になれなかった。「地震による建物の倒壊という想定が全くできていなかった」。当時の経験を基に、救助の技術を磨く競技大会を発案し、震災を知らない若い警察官の底上げを図っている。

 人数分のスコップに、つるはしが少し、一抱えほどのロープ。土煙に包まれ、ひしゃげた一戸建て住宅を前にして、松本さんらにはそれだけの装備しかなかった。

 住宅には、女性が取り残されている。松本さんは、がれきの隙間に体をねじ込んだ。はいつくばって進んでいくと、布団の先に、人の手か足のようなものが目に入る。だが、それ以上は前に進めない。

 1階を押しつぶすはりは、4、5人の警察官が力を合わせたところでびくともしない。救助を求めた親族の男性が「分かった。もうええ、わしがやる」と、つるはしでがれきをたたき始めた。

 周辺にはガスの臭いが漂っている。火花が飛んで発火する恐れがあるため、止めに入る。振りほどくように、男性が叫んだ。

 「こんなときに、警察は何もしてくれへんのか。県民の命を守るのが警察ちゃうんか」