校舎入り口に設置された緊急時用の鍵保管庫。元日の津波警報発表時は開かず、避難してきた住民が入れなかった=豊岡市瀬戸、旧港西小学校
校舎入り口に設置された緊急時用の鍵保管庫。元日の津波警報発表時は開かず、避難してきた住民が入れなかった=豊岡市瀬戸、旧港西小学校

 元日の能登半島地震に伴い、津波警報が発表された兵庫県豊岡市で、同市指定の津波避難所の鍵保管庫が開けられず、住民が退避できないケースがあったことが分かった。市の設置する鍵保管庫は震度5以上で自動的に開く仕組み。当日に豊岡で観測された震度は4だったが、地震の50分後には高さ1~3メートルの津波が予想されていた。住民からは不安の声が上がっている。(丸山桃奈)

 市は、日本海沿岸の市内42カ所を津波避難場所に指定している。うち神社などの屋外型が32カ所、小中学校などの屋内型が10カ所。屋内型のうち、週末に人の出入りが少ない旧港西小学校3階▽港小学校3階▽港中学校3階▽竹野小学校3階▽民間工場-の5カ所は、震度5以上を感知すると自動的に開く鍵の保管庫を設置しており、避難者はそこから鍵を取り、門扉や戸口を開いて建物内に入る。

 能登地震は1月1日午後4時10分に起き、気象庁は兵庫県北部に津波警報を発表。市は避難指示を出さなかったが、自主的に避難場所へ向かう住民もいた。ところが、豊岡は震度4だったため、屋内型5カ所は鍵の保管庫が開かなかった。

 関係者によると、竹野小と工場では、近くに住む校長や経営者が駆け付けて解錠したものの、残る3カ所は屋内に入れなかった避難者がいたという。

 住民らは「警報が出て津波が来るというのに、鍵が取り出せないのは困る。地震(の規模)と津波(の有無)は別。震度4でも開けられるようにしてほしい」と訴える。

 市によると、兵庫県に近い日本海の海底断層で地震が起きた場合、沿岸の日和山には約10分で高さ1メートルの津波が到達する恐れがある。地元の角金勝彦区長は「鍵が開かず、ここから別の場所に避難しようとすれば10分以上かかる」と指摘。真冬に屋外で長時間とどまるのも心身に危険だと心配する。

 有事の際は、鍵保管庫を壊すよう避難訓練で周知されていたが、角金さんによると、ちゅうちょして壊せなかった。保管庫は震度5以上でないと開かないことを今回初めて知った住民も多くいたという。

 5カ所の保管庫は高知県のメーカー製で、震度5よりも小さい揺れで開くタイプもあるという。住民の訴えに対し、市の担当者は「課題であると認識しており、別の方法でも開けられる保管庫の導入を検討している」と話している。