黄色と黒のコントラストに、おなじみの虎の刻印。阪神タイガースカラーの財布やコインケースといった革製品を、広島県東広島市の革細工職人・坂木英樹さん(54)が製作している。素材に使うのは、兵庫県内で有害鳥獣として駆除されたシカの皮。これまで広島県民として、広島カープとコラボした鯉カラーの革製品も手がけてきたが、今年から虎にも手を広げた。その思いとは-。(鈴木雅之)
皮革製品を取り扱う「ベルズスクエア」(東広島市)を営む坂木さんがジビエレザーを使い始めたのは5年前。シカやイノシシによる農作物の食害、植物種の減少などが全国的な課題となる中、「ジビエレザーを活用することで狩猟が強化され、シカやイノシシの生息数が適正な水準に落ち着けば」と考えた。
有害鳥獣として駆除されたシカやイノシシの活用で最も知られるのはジビエ料理だが、食肉として利用できる部位はわずかで、処理コストの方が高い。採算性の低さに加え、ハンターの高齢化や担い手不足もあって駆除数はなかなか増えず、生息数の適正化はたやすくないのが実情だ。
一方、ジビエレザーを活用すれば、駆除後に大半が廃棄されるという野生動物の皮に新たな価値が生まれ、循環につながる。全国有数の皮革産地・兵庫県でも、姫路市やたつの市などで複数の業者がその技術力を生かして生産に力を入れている。
魅力の一つは、野生ならではの生き傷の多さ。ただ坂木さんは「美しいと感じてくれるのはまだ一握り。認知度の低さも影響している。ジビエレザーがもっと知られるようになれば、理解が進んで活用も広がるはず」と語る。