兵庫県の元西播磨県民局長が作成した告発文書を検証する県議会調査特別委員会(百条委員会)は30日、斎藤元彦知事のパワハラ疑惑を調べるため、斎藤知事本人に初めて証人尋問をした。斎藤知事は「机をたたいた」「付箋を投げた」などの一部行為を認め、「不適切だった。不快に思った職員におわびする」と謝罪した。一方でパワハラの認識は「百条委などが判断すること」として認めず、証言した職員の認識とずれもみられた。
百条委は、職員から得られた証言や職員アンケートなどを基に、斎藤知事にパワハラが疑われる行為の有無や認識を確認した。
アンケートの回答には「知事が机をたたいて怒った」という記述があるが、斎藤知事はこれまでの会見で否定。だが30日午後の尋問で元職員が、2021年9月に新聞掲載された県の事業で、斎藤知事が「聞いていない」などと怒って「片手で机を1、2回たたいた」と証言した。
続く尋問で斎藤知事は「一度やった記憶がある」と説明。就任直後の緊張感を理由に「自分が知らないところで業務が進められると不安を強く抱いた。不適切だった」として謝罪した。
また、夜間や休日にチャットで業務指示をしていたことも認め、「適切でなかった面もある。甘えがあったかもしれない」とした。
さらに斎藤知事は今春、重要な案件で当時の片山安孝副知事(7月に辞職)に不十分な調整があったと明かし、「残念な思いで思わず手に持っていた付箋1枚を卓上に投げた。本人に向かって投げたわけではない」と説明した。
ただ、百条委の委員から職員に対する具体的な言動を問われ、「当時の認識では正しかった」と弁明したり、「記憶にない」と答えたりする場面も目立った。百条委は今後、専門家の意見も聞いてパワハラであるかどうかを評価する。
また、百条委は30日、公益通報保護の判断や贈答品受領の疑惑を調べるため9月5、6日に出頭を求める証人を決めた。関係者によると、5日は県の内部調査に協力した特別弁護士や贈答品の受領で関わりのある企業関係者、部長級職員ら5人を、6日は斎藤知事と元副知事の片山氏に出頭を要請する。
一方、兵庫県議会(定数86)の第4会派「ひょうご県民連合」(9人)は30日、9月19日に開会する9月定例会で斎藤知事に対する不信任決議案を提出する方針を固めた。最大会派の自民党県議団(37人)や第2会派の維新の会県議団(21人)にも連携を呼びかける。
地方自治法では不信任決議案の可決には4分の3以上の賛成が必要で、県議会では65人の賛成が必要になる。可決されると、斎藤知事は10日以内に県議会の解散か、自身の失職かのどちらかを選択することになる。
県民連合の迎山志保政調会長は「告発文書を巡る一連の問題による県政の停滞はもはや看過できない。県議会全体で知事の辞職を求めていきたい」としている。(金 慶順、前川茂之)