パワハラ疑惑などを文書で告発された問題を巡り、兵庫県議会から不信任決議を受けた斎藤元彦知事は26日午後、県庁で記者会見し、議会を解散せずに30日付で失職し、出直し選挙に立候補すると表明した。告発文書問題で招いた県政の混乱を謝罪した一方、就任後約3年の実績を強調し「改革を止めるわけにはいかない。県民に信を問いたい」と述べた。知事選は11月10日か同17日に行われる見通し。問題の発覚から半年を経て、県政はトップが失職する転換点を迎える。
不信任決議を受け、斎藤知事は29日までに議会を解散しなければ30日付で失職するため、辞職も含めて判断を迫られていた。会見で斎藤知事は「解散の選択肢は最初からなかった」と説明し、辞職する考えもなかったと明かした。出直し選では政党の推薦や支援を求めず、「厳しいだろうが一人の無所属で戦う」とし、争点は「斎藤県政を続けていくかどうか」と話した。
その上で、ここ数日テレビ番組などに出演して繰り返した県庁舎再整備計画の撤回や県立大の授業料無償化などを実績として挙げ、「改革、若い世代への投資を進めていきたい。知事の仕事を続けさせてほしい」と訴えた。また、県議会の不信任決議に対しては「本当に知事が職を辞すべきことなのかという思いが根底にある」と明かした。
また20年続いた井戸敏三前知事の県政に触れ、「仕事の進め方が違うと指摘された」「大きな反発があったと思う」とも話した。パワハラ疑惑などに対しては「心の中でおごり、慢心があった。生まれ変わって改めなければならない」と反省を口にした。「それを含めて県民の皆さんに判断していただきたい」とした。
元西播磨県民局長の男性が作成した告発文書に対する県の対応は、県議会調査特別委員会(百条委員会)で証言した弁護士や大学教授が違法性を指摘した。斎藤知事は「県政の混乱を招いたことは県民におわびしたい」と謝罪したものの、「法的には適切だった」とこれまでの見解を述べた。
斎藤知事が自動失職した後の出直し選で再選した場合、新たな任期は4年。自ら辞職すれば、再選しても任期は従来の来年7月までだった。(金 慶順、前川茂之)
【告発文書問題】兵庫県西播磨県民局長だった男性が3月、斎藤元彦知事のパワハラや企業からの贈答品の受領など7項目の疑惑を挙げた告発文書を作り関係者らに送付した。4月に県の公益通報窓口にも通報したが、県は通報者への不利益な扱いを禁じる公益通報者保護法の対象にならないと判断。内部調査を進めて誹謗(ひぼう)中傷と認定し、5月に停職3カ月の懲戒処分とした。これに対し調査の中立性を疑う声が噴出し、県議会が6月、調査特別委員会(百条委員会)を設置。男性は7月に証言予定だったが、同月7日に死亡した。片山安孝副知事が県政混乱を理由に辞職。斎藤知事は8月30日と9月6日、百条委に出席し疑惑について証言した。