兵庫県内の神戸・阪神間とそれ以外の地域で、住宅の耐震化率に開きのあることが、国土交通省の全国調査で分かった。30年前の阪神・淡路大震災の被災地では建て替えが進んだこと、高齢化の進む地域では耐震化が進みにくいことなどが背景にあるとみられる。専門家は比較的安価な耐震補強策もあるとし、備えを急ぐよう呼びかける。(名倉あかり)
国交省が昨年11月に公表した。県内の自治体別の耐震化率がそろって明らかになるのは初めて。市町ごとに算定方法や時期が違い、単純比較はできないが、地域別の傾向はうかがえる。
最も高かったのは芦屋市の96・7%。三田市(95・2%)、神戸市(94%)と続いた。芦屋市によると、阪神・淡路で建物の9割が何らかの被害を受けており、建て替えを迫られたことも要因にあるという。西宮市、宝塚市なども90%を超えた。
三田市はニュータウン開発や、耐震改修の助成制度で市独自の上乗せがあることを理由に挙げた。
一方、耐震化率を算定した市町の約7割が全国の数値(87%)を下回った。但馬、丹波地域で80%を超えた市町はなく、丹波市(66%)は「耐震化促進事業の周知が十分でなかった」としている。
古い木造住宅の多くが倒壊した昨年の能登半島地震では、高齢化と低い耐震化率の関連が指摘された。稲美町(75・4%)やたつの市(76・1%)も「残りの人生を考えた時に、改修費用の捻出にためらいがあるのでは」と高齢化の課題を挙げる。
県内で最も低かった相生市は、2018年時点の推定値で79・3%まで上がっているという。
「計算方法が煩雑」「住宅の実態がつかめない区域がある」などの理由で、未算定だったのは7市町。南あわじ市(79・7%、2018年)や佐用町(76・2%、同)は数値を把握しているものの、最新の数字ではないことなどを理由に公表を控えたという。
兵庫県立大大学院の永野康行教授(建築構造学)は「古い家が新しい家に建て替われば、耐震化率は上がる。まちの循環が生まれにくい中山間地と都市部で差が開くのは当然」と分析。「阪神・淡路後の修繕や建て替えで基準を満たしていても、規定が強化された2000年以前であれば注意が必要」とも話した。
比較的安価な対策としては「居間や寝室だけでも耐震補強する」「身を隠すテーブルや椅子を丈夫なものに変える」などを挙げた。
耐震化率は、建物の構造や建築時期などを調べた総務省の住宅・土地統計調査などに基づき、各自治体が算定する。調査年次や方法はばらばらのため、永野教授は「比較するには計算方法の統一が必要」としている。