川崎重工業(神戸市中央区)から中国の関連会社に出向中の男性社員=当時(35)=が自死したのは過重労働や海外生活のストレスが原因だとして、神戸市内に住む妻と娘2人が川重に約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が15日、神戸地裁であり、河本寿一裁判長は請求を棄却した。原告側は控訴する方針。
判決などによると、男性は2013年4月、川重に在籍したまま中国の現地企業との合弁会社に出向。同7月に単身赴任先のマンションから飛び降りて死亡した。16年に神戸東労働基準監督署が労災に認定した。
原告側は、十分な語学研修などがないまま初めての海外出向となり、本来の設計業務に加え、専門外の装置のトラブル対応にも追われ、過重な負担が課せられたため自死に追い込まれたと主張した。
判決では、海外出向について「言語や文化の違いから一定のストレスがかかることは否定できない」と指摘。ただ、男性には中国への出張経験があり、語学レッスンも受講していたとして「出向元として負うべき義務を怠ったとは認められない」とした。
業務は心理的な負荷があったとしつつも、トラブル対応は「責任を負う立場になかった」とし、「量的にも質的にも過度な負担を伴うものとは認められない」と退けた。男性の死亡が自死か事故死かも争われたが、判決は自死と判断した。
判決後、会見した男性の妻は「夫の死は夫だけの問題ではなく社会問題。泣き寝入りはしたくない」と悔しさをにじませた。弁護団長の八木和也弁護士は「過労死や労災認定で議論される基準を裁判所は理解していない」と非難した。
川重は「当社の主張が認められたものと考えております」とコメントした。