阪神・淡路大震災による大火に見舞われたまちで、魚住哲也さん(82)=神戸市西区井吹台東町=は母秀子さん=当時(76)=を亡くした。全壊した家の下敷きになった母を助け出そうとしたが、迫る炎の前では無理だった。翌日、焼け跡で小さな遺骨を拾い集めた。「助けたくても、助けられなかった」。30年たった今も心残りがある。
■「お父さんも焼け死ぬ!」でわれに返り
1995年1月17日。神戸市長田区御蔵通、菅原通一帯の「御菅地区」では大規模な火災が起きた。市消防局によると、長田区全域で焼け跡から計255人の遺体や遺骨が見つかった。秀子さんもその一人だ。