神戸発電所3、4号機=2022年1月、神戸市灘区灘浜東町2
神戸発電所3、4号機=2022年1月、神戸市灘区灘浜東町2

 神戸製鋼所の石炭火力発電所(神戸市灘区)を巡り、周辺住民が同社や関西電力などに稼働差し止めを求めた訴訟で、住民側は1日、控訴を棄却した大阪高裁判決について、上告しない方針を明らかにした。

 4月の高裁判決は、気候変動による個人の権利侵害について「現時点で具体的危険が生じていると認められない」とした一審判決を支持。気温上昇を抑えた世界で幸福に暮らす権利を「気候変動における人格権」と掲げ、発電所の二酸化炭素(CO2)排出量の削減を求めた住民側に対し、概念が抽象的として退けた。

 発電所の稼働に伴う地球温暖化を懸念し、2018年の提訴から約7年。原告団と弁護団は「気候変動の法的責任を問う道筋をつくった」と総括した。

 同日発表した声明では、海外で人権保護の役割を果たそうとする司法判断が相次ぐことに触れ、「日本の裁判所は自らの役割を放棄した」と主張。CO2の大量排出について人権侵害を理由に争った「日本初の本格的な気候変動訴訟」とし、引き続き同様の訴訟を支援していくとした。