神戸製鋼所の石炭火力発電所(神戸市灘区)を巡り、周辺住民らが同社や関西電力など3社に稼働差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決が24日、大阪高裁であり、本多久美子裁判長(浜本章子裁判長代読)は住民側の控訴を棄却した。
2023年3月の一審判決は、気候変動による個人の権利侵害を差し止め請求の理由とすることは否定しなかったが、「現時点で具体的危険が生じていると認められない」と退けた。
住民側は控訴審で、産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑える目標が国際合意になっていると主張。気温上昇を抑えた世界で幸福に暮らす権利を「気候変動における人格権」と掲げ、発電所の二酸化炭素(CO2)排出量の削減も新たに求めた。
本多裁判長は稼働差し止めについて一審の判断を支持し、同様に退けた。CO2の大量排出は「権利侵害」と認めつつも、人格権の概念が抽象的で不明確なため「合理的な指標になりえない」と退けた。
判決後の会見で原告側の池田直樹弁護団長は「従来の司法判断の枠を出ず、変われない日本の象徴のような判決で残念だ」と非難した。神戸製鋼所は「(住民らが)上告した場合には、引き続き適切に対応する」としている。
同発電所を巡っては、増設を巡る環境影響評価(環境アセスメント)を認めた経済産業相の確定通知取り消しを求める訴訟も行われ、23年3月に原告敗訴の二審判決が確定している。