人口減少が進む中、地方の医師不足が問題化している。国のデータによると、医師は都市部に集中し、人口比で最も多い地域と少ない地域の格差は約2倍に広がっているという。中でも過疎地やへき地は深刻で、災害時の医療体制などに住民らの不安は高まる。播磨灘に浮かぶ離島、家島諸島(姫路市家島町)で、医療の現場を取材した。(辰巳直之)
姫路港から定期船で約30分の沖合にある家島。姫路市が運営する国民健康保険家島診療所は、島内に2軒ある医療機関のうちの一つだ。2016年6月に勤務医が2人体制から1人になり今年、10年目を迎えた。市は常勤医の募集を続けているが、応募はない。市地域医療課の担当者は「離島での医師確保問題は深刻だ」とこぼす。
「今のところ、1人体制でも大変ではない」。そう語るのは同診療所所長の田畑雅彦医師(61)。1992年に初めて赴任し、計2回、通算30年間、地域医療を守ってきた。平日は本土から定期船で通い、週2、3日の宿直勤務や往診もこなす。「1人でも問題がないのは、島の人口減少が大きい」と田畑医師は言う。