約100年前の製法でバウムクーヘンを作る子どもたち=広島市南区、ユーハイム似島歓迎交流センター
約100年前の製法でバウムクーヘンを作る子どもたち=広島市南区、ユーハイム似島歓迎交流センター

 「お菓子には世界を平和にする力がある」-。洋菓子製造のユーハイム(神戸市中央区)が社の「存在意義」とする言葉は、第1次世界大戦で日本軍の捕虜になったドイツ人創業者、カール・ユーハイム氏(1886~1945年)の意志を継いだものだ。ユーハイム氏が日本で初めてバウムクーヘンを焼いた広島・似島(にのしま)の捕虜収容所跡には、106年前の製法を体験し、平和について考える施設がある。同氏の名を冠したその施設を訪ねた。(真鍋 愛)

■捕虜時代に原爆ドームでの展覧会で販売

 広島港から約3キロ南の瀬戸内海に浮かぶ似島。かつて捕虜の収容所があり、その後、被爆者の臨時野戦病院が開設された。その土地に今、海水プールや宿泊棟を備えた「ユーハイム似島歓迎交流センター」がある。

 敷地には被爆者の遺体を焼いた焼却炉の一部や、市平和記念式典の献水に利用される井戸など戦争関連の施設が残る。

 センターの目玉の一つは炊飯テラスで開かれる「バウムクーヘンづくり」だ。体験前に必ず、似島と戦争の歴史をスタッフが説明する。

 所長の大谷和昭さん(67)は「島には今も戦没者の遺骨が埋まり、旧陸軍の遺構も残る。歴史を知ることで『お菓子作りは平和じゃないとできない』と実感してもらえる」と語る。

□    □