長引く物価高で消費の現場に異変が起きている。兵庫県内では、食品スーパーが低価格品で節約志向の買い物客を引き付ける一方、百貨店は高額品の売れ行きが好調だ。こうした「消費の二極化」が進む中、8日投開票の衆院選で多くの政党が物価高対策として消費税減税を掲げる。ただ専門家は「一時的に効果はあるかもしれないが、長い目で見れば賃金が上がることの方が重要」と指摘する。
「米も野菜も値段が上がり、安いととても助かる。近所に住む家族の分も買い込みました」
買い物客の70代の女性が声を弾ませた。神戸市兵庫区の「関西スーパーデイリーマート大開店」は昨年11月、低価格を前面に出して改装オープン。運搬に使うケースごと店内に商品を並べ、コストを抑えて安く売る。山盛りに陳列された特価品のカップ麺を、客が次々と手に取っていた。
関西スーパーなどを展開するエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングは昨年4月、低価格店を初めて開いた。既存の店を低価格仕様に変えると、売り上げが一気に伸びるという。今年からプライベートブランド(PB)の一部商品も値下げし「1円でも安く」という消費者の期待に応える。
関西の別の食品関連企業は、近く発売する商品で原料の品質を落とした。価格を下げるためだ。「『多少まずくても安い方を買う』という層を、無視できなくなってきた。消費の二極化は底が見えない」。担当者は厳しい表情で話す。
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もう一方の「極」、高額消費も活況を呈している。
大丸神戸店(神戸市中央区)は2025年度、年間売上高が19年ぶりに1千億円に届きそうだ。
高額品消費が引っ張り、昨年12月は「美術・呉服・宝飾・時計」部門が前年同月比8割近く増えた。富裕層の旺盛な消費を取り込もうと、同店は眼鏡と宝石売り場を改装し、眼鏡専用のVIPルームまで設けた。
今年1月には、大丸に入る欧州の高級宝飾店が大幅に値上げしたが、直後の週末はいつもと変わらぬ入店待ちの行列ができていた。
こうした傾向はスーパーでも見られる。H2Oは神戸市内の店で低価格路線を進めつつ、昨年4月、宝塚市に開いた「阪急オアシス」では高級路線を磨く。この店は一頭買いした黒毛和牛の希少部位や高級フルーツなどこだわりの品をそろえ、売れ行きは好調という。
物価高に賃金上昇が追い付かず、実質賃金は減少傾向が続く。低価格品を選ぶのは生活を守るためだ。一方、歴史的な株高や不動産価格の上昇、大企業の賃上げなどインフレの恩恵を受ける層は活発に消費する。
特定社会保険労務士でファイナンシャル・プランナーの長谷川まゆみさん=神戸市中央区=は「時間給で働く人は最低賃金ぎりぎりが多く、年金も支給額の引き上げが物価高に追い付いていない」と話す。衆院選で各党が公約に盛り込む消費税減税については「家計の足しにはなるが、効果は一過性にとどまるのでは。現役世代がキャリアアップに挑戦でき、賃金で報われることが望ましい」と指摘した。(広岡磨璃)





















