「トライやる・ウィーク」は、兵庫県教育委員会が1998年に始めた制度で、中学2年生が対象の職業体験。関東から移住してきた私は以前から興味津々。
18年前、「トライやる・ウィーク」で農業体験したことがきっかけで農家になったという、「タチワキゆとり農園」(豊岡市出石町)の小山収平さんに、思い出の地で話を聞いた。
当時、「家が近かった」という理由で農業を選択。とりわけ興味があったわけではないらしい。希望したのは小山さんだけだったが、集団生活の煩わしさを感じ始めていたころだったので、黙々とこなす作業はむしろ心休まる時間だったという。終わった時の達成感は格別だったし、自分が間引きしたニンジンを食べさせてもらったときの驚愕(きょうがく)の美味(おい)しさには強い感動を覚えた。そこですぐに農家を目指そうと思ったわけではないが、将来の進路を決める際、自然とその道を選んでいたという。
6年前に独立して、ニンジンを筆頭にホウレンソウやピーマンなどを栽培。若手農家の生産者グループ「豊岡オーガニックワークス」の一員でもあり、豊岡ならではの有機野菜の価値を高めるため、仲間たちと切磋琢磨(せっさたくま)している。「大変なことも多いけれど、やりがいも感動も大きい」という笑顔がとても素敵だった。
本年度もたくさんの中学2年生が、さまざまな体験をしたと思う。出石中学校の小山さんの後輩たちもいい顔をしていた。14歳というセンシティブな年齢に普段接することのない世界に触れることは、必ず、その後の人生の糧となるだろう。
私だったら何を体験しただろう? 兵庫県の中学生が羨(うら)ましくて仕方ない。