太平洋戦争中に旧陸軍が疑似飛行機の着陸訓練に使った設備「鎮碇」=7月、栃木県大田原市(同市提供)
 太平洋戦争中に旧陸軍が疑似飛行機の着陸訓練に使った設備「鎮碇」=7月、栃木県大田原市(同市提供)

 太平洋戦争中に旧陸軍が疑似飛行機の着陸訓練に使った設備「鎮碇」が、栃木県大田原市の私有地に残っていたことが分かった。専門家らが残存を確認したのは全国でも数例しかなく、今回は初めて、設備を構成する重りなども地下の竪穴から見つかった。調査を進める地元の学芸員は「当時の訓練の実態を知る上で貴重な発見だ」と話す。

 大田原市の「那須与一伝承館」によると、鎮碇はコンクリート製。高さ約2・3メートル、横約3・8メートル、奥行き約2・4メートルで、両脚の上に梁を乗せたようなコの字形をしている。離れた場所にある高い塔からワイヤを張り、飛行士が乗った疑似飛行機をつるして滑らせることで、着陸時の操縦感覚を訓練したと考えられている。

 伝承館が戦後80年の企画展に際して戦争関連の情報を募ると、大田原市の金丸原飛行場跡付近に鎮碇があるとの情報が市民から寄せられ、形や、当時を知る地元の人の話から断定した。

 伝承館の重藤智彬学芸員は「ワイヤを張る方法など当時の詳細が浮かび上がった」とした。