インタビューに答える前田紗江
 インタビューに答える前田紗江

 演劇性を重視した優雅なパフォーマンスで世界最高峰とも称される英国ロイヤル・バレエ団。伝統を誇りながら新作の上演や舞台裏の動画配信にも積極的に取り組み、10人以上の日本人をはじめ多様な国籍のダンサーが活躍する。7月にあった来日公演では、古典の名作「リーズの結婚」と「ジゼル」を上演、大きな反響を得た。芸術監督のケビン・オヘアは「ビジョンを共有しながら、常にダンサーの自由や個性を大事にしている」と語る。

 「お客さんを幸せにできるダンサーの表現力や表情、体の使い方に憧れ、入団が夢だった」と話すのは、準主役級のファースト・ソリストの前田紗江。来日公演では、けがで降板したプリンシパルの高田茜に代わり、急きょロイヤル・バレエを代表する作品の一つ「リーズの結婚」の主演を務め、喝采を浴びた。子どもの頃、DVDで、同団のマリアネラ・ヌニェスが踊るリーズを夢中で見ていたといい「光栄な気持ちで、見ている人に楽しんでもらうことを考えて踊った」と振り返る。

 前田は、ロイヤル・バレエの強みを「ダンサー一人一人の個性が強く、誰もが古典から現代までどんな演目も踊ることができる」と説明する。オヘアの「21世紀の古典を作りたい」との方針の下、来日公演で上演した2作のような何十年も踊り継がれる名作とともに、作家バージニア・ウルフの内面世界を描く「ウルフ・ワークス」など気鋭の振付家による現代の作品も次々と上演。前田は「今シーズンは毎週違う表現が必要になる新しい役に取り組み、多忙だったが成長できた」と実感している。

 オヘアがダンサーに求めるのは技術だけではない。「どんな作品でもその役になりきり、自分なりにかみ砕いて解釈した上で舞台に立つことが求められます。特にプリンシパルにはそれぞれに自分の解釈があるからこそ、同じ役を誰が演じても見応えのあるものになる」。

 ダンサーの個性を引き出すために大切にしているのは、伝統を上から押しつけるのではなく「ダンサーの意見に耳を傾け、常にコミュニケーションを取ること」。来日公演のリハーサルでも、ダンサーの役に対する考えを尊重した上で、演じる際に必要な細かいしぐさや表現を指導していた。

 「新しいビジョンを持ち、挑戦を続けないと硬直化してしまう。世界に向けて窓を開くような感覚を持っている。最高のパフォーマンスを多くの人に届けていきたい」