1990年9月、支援者と無罪判決を喜ぶ前川彰司さん
 1990年9月、支援者と無罪判決を喜ぶ前川彰司さん

 「本当は前川君を見ていなかったのに、見たと言った」。裁判で有罪につながる証言をした男性はこう語り、審理に携わった元裁判官は事件を「砂上の楼閣」と評した。1986年に福井市で女子中学生が殺害された事件で逮捕された前川彰司さん(60)は、有力な物証がない中「事件後、服に血を付けた前川さんを見た」などという男性らの証言で有罪となり、服役した。この春、やり直しの裁判(再審)が開かれ、事件から39年を経て、8月1日にようやく無罪が確定した。ただ、再審無罪となっても福井県警や検察は謝罪や検証をする意向を示さないまま。証言をした男性や元裁判官の話から、事件をひもといた。(共同通信=中野湧大、片山歩)