2024年度の企業倒産が全国で1万件を超えた。13年度以来、11年ぶりの高い水準だ。特に中小零細企業の苦境が浮き彫りになった。

 日銀による大規模金融緩和など、デフレ脱却を目指したこれまでの経済政策の効果が広く浸透しなかった証左である。世界経済の先行き不透明感は増しており、政府の効果的な対策が急がれる。

 東京商工リサーチによれば、関東や近畿、中部など全国の9地区全てで倒産件数が2年連続で前年度を上回った。兵庫県内も571件と、12年度以来の高水準となった。

 注視すべきは、計1万144件の倒産の約9割を従業員10人未満の中小零細企業が占めることだ。中小企業は人手不足や後継者難でもともと事業環境が厳しい。20年以降は、新型コロナウイルス禍やロシアのウクライナ侵攻、物価高騰などで経営への負担がさらに増した。

 コロナ禍で中小企業の支援策として行われた実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済負担ものしかかる。

 一方、大企業は円安効果や価格転嫁などで業績回復が進んだ。SMBC日興証券によると、3月期決算の上場企業の純利益合計額は、21年度から3年連続で過去最高を更新した。今年2月時点の予想では24年度も更新する見通しだ。

 経済回復の恩恵は大手には届いたが、中小企業に行き渡っていない。石破茂首相は先日、トランプ米政権の高関税政策を受けて中小支援に全力を挙げる方針を表明した。「タイミングを失することがないように対応する」と述べた。

 政府が25日に決定した緊急の総合対策は、企業の資金繰りの支援強化や国内消費喚起などの5本柱からなる。具体的には、5月以降に中小企業向け融資の金利引き下げの対象拡大を検討するほか、関税の影響による雇用不安を防ぐため雇用調整助成金を柔軟に適用することなどを盛り込んだ。

 しかし、場当たり的な対策では中小企業の収益力向上にはつながるまい。政府は生産性向上や価格転嫁をしやすい環境整備といった政策の実効性を高め、強力に推し進めるべきだ。