神戸新聞NEXT

 経済同友会の代表幹事や政府の経済財政諮問会議の委員を務め、経済界の顔ともいえる存在の新浪剛史氏が、サントリーホールディングス代表取締役会長を退いた。購入したとされるサプリメントに関連し8月22日に警察の家宅捜索を受けたという。自らサントリー側に説明し潔白を主張したが、役員は一致して辞任を求めた。

 サントリーはサプリも販売する。サプリについて違法行為が疑われただけでも信用を損なう。厳正な対処は当然だ。家宅捜索の事実はネット上などで発信されており、時間を費やせば消費者などから批判が高まると判断したのだろう。

 新浪氏によると、海外出張の時差ぼけ対策として4月に米国でサプリを買い、知人に日本へ送るよう頼んだが、受け取った家族が廃棄したという。

 知人は8月にも、福岡在住の弟に新浪氏へのサプリ発送を依頼したが、弟が違法薬物事件で逮捕され、新浪氏への疑いが生じた。このサプリには有害な大麻由来成分が検出された。

 新浪氏は4月のサプリは適法と述べるが、現物は示していない。海外製品には日本での違法成分を含む例があり、厚生労働省は注意を促している。サプリも扱う企業集団のトップとして軽率と言わざるを得ない。

 8月のサプリは所持や使用、輸入指示を否定し4月のと同一か不明と主張する。家宅捜索では発見されず尿検査も陰性だった。真相究明は捜査に委ねられるが、なぜ知人が新浪氏に発送を頼んだかなど疑問は多い。

 新浪氏は、経済同友会の代表幹事職は直ちに退かないと表明した。自民党に裏金疑惑の説明責任を果たすよう求めるなど、大胆な発言は異彩を放ってきた。しかし経営者としての資質に疑義が生じた以上、身を引くのが筋だろう。

 不祥事による大企業トップの辞任は後を絶たない。石油業界では最近、2代続いてセクハラで社長が退いた例もあった。

 法令順守や環境保全、地域貢献など、企業は自社の利益向上にとどまらず社会的責任を果たさねばならない。そのトップにはより高い水準のモラルが求められることを、すべての経済人が肝に銘ずるべきだ。