聴覚障害者の国際総合スポーツ大会「東京デフリンピック」が15日に開幕する。昨年、神戸で開かれた世界パラ陸上選手権に続き、参加選手の活躍とともに障害に対する理解の深まりに期待したい。
デフリンピックは1924年に始まった。身体、視覚、知的障害のある選手が参加するパラリンピックより歴史は古く、独自に大会を重ねてきた。日本では初開催で、陸上、競泳、サッカー、バレーボールなど21競技を実施するほか、五輪種目ではないボウリングやオリエンテーリングも採用されている。参加人数は70~80の国・地域から約3千人、日本選手団は約270人に上る。
デフは英語で「耳が聞こえない」を指す。陸上や競泳のスタートはランプの点灯で知らされ、審判の合図は笛に加えて旗も使う。団体競技ではチームメートと手話やアイコンタクト、個別のサインで意思を伝達する。公平性を保つため補聴器の使用は認められていない。
パラリンピックは障害によってさまざまな規定を設けているが、デフリンピックの競技は五輪とほぼ同じルールで実施されるのも特徴だ。
競技は健常者のスポーツと大きな違いはないが、デフアスリートには観客からの声援や拍手が届かない。目で見える応援スタイルとして「サインエール」の周知が進む。
例えば、選手を鼓舞する「行け!」は顔の横で両手を振り、勢いよく前に突き出すポーズで表現。「大丈夫、勝つ!」は右手を左胸に当ててスライドさせて拳を握る。いずれも手話言語を組み合わせて考案され、音のない世界で闘う選手をジェスチャーでもり立てる。「サインエール」が広がることで手話が身近になり、聴覚障害者との距離も縮まるのではないだろうか。
神戸では9月、機運を盛り上げるイベントが開かれ、デフサッカー日本代表選手と子どもたちがふれ合った。障害の有無に関係なく交流し、自然な形で壁を乗り越えられるのがスポーツの力だ。デフリンピック東京大会を契機とし、聞こえない、聞こえにくい-が、その人の個性と受け止められる社会に前進させたい。

























