高市早苗首相の就任後初の論戦の場となった臨時国会が閉会した。総額18兆3千億円に上る補正予算は自民党と日本維新の会の与党に加え、国民民主党、公明党など一部野党の賛成多数で成立した。
首相は「緊急性のある事業を積み上げた結果」と強調するが、使い残しが多い基金を積み増すなど説得力を欠く。最優先の物価高対策とは関係ない防衛力強化関連の支出が盛り込まれるなど問題点も数多い。
財源の6割超は国債頼みだ。新型コロナウイルス禍のような経済危機でもないのに巨額の予算を組んだことで財政規律は一層悪化しかねない。しかし国会で歳入や歳出の在り方を巡る議論は尽くされなかった。行政を監視し、政策の実効性を精査する役割を果たしたとは言い難い。
自民、維新の与党会派は無所属議員の取り込みで衆院では過半数を回復したものの、参院では下回る苦境が続く。物価高対策にめどがついたのは、補正予算編成で野党側の主張を取り入れたことが大きい。国民民主が求めるガソリン税の暫定税率廃止、公明が掲げた子ども1人2万円の現金給付などが盛り込まれた。
暫定税率の廃止で国と地方を合わせ年間約1兆5千億円の税収が減るが、代替財源の議論は先送りした。子どもへの現金給付、電気・ガス料金の補助は全世帯が対象になる。ばらまき色が濃く、本当に困っている人への支援策として十分なのか。政策の実現を優先するあまり、予算の膨張を許し、修正することなく成立させた野党側にも責任がある。
積み残された課題は多い。企業・団体献金の見直しがまたもや先送りとなった。野党が提出した規制強化案に対し、与党は唐突に打ち出した衆院議員の定数を1割削減する法案の成立に固執した。1年以内に結論が得られなければ自動的に削減するという乱暴な条項が混乱を広げた。批判が噴出し、審議入りすらできなかったのは当然だ。
そもそも定数削減は、維新が自民と連立を組む際に「絶対条件」として強く求めた。民主主義の根幹である選挙制度改革は与野党の幅広い合意に基づくべきで、与党の独断専行は許されない。問題のある法案はいったん白紙に戻すべきだ。
政治資金の透明性は政治への信頼を左右する。企業・団体献金の見直しこそ、最優先に結論を見いださねばならない。だが首相の対応も及び腰で真剣さが伝わってこない。中途半端な改革では、政治不信の解消には到底結びつかない。
年明けの通常国会では、与野党双方が持ち越された課題の解決へ考え方を明示し、国民の疑問や不安に応える責務を果たしてもらいたい。
























