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 小中学校や高校の成績の付け方が変わりそうだ。

 文部科学省は、学習評価の観点の一つである「主体的に学習に取り組む態度」について、今後は成績に直接反映させない方針を示した。主体的な態度を評価するのは難しいとの声が、学校現場などから上がっていた。2030年度から順次導入予定の次期学習指導要領に向け、専門の作業部会を立ち上げるという。

 子どもたちの意欲や成長を引き出す公平な評価方法はどうあるべきなのか。現場の声を丁寧に吸い上げ、議論を深めてほしい。

 現在は教科ごとに「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の三つの観点をそれぞれ「A・B・C」で評価し、それらを総括して小学校は3段階、中学校は5段階の「評定」を付けている。家庭に渡される通知表は、評定を踏まえた成績である。

 主体的な態度を評価するに当たり、文科省は粘り強さや能動的に学びに関わったかどうかを軸とする方法を示している。だが実際には、宿題の提出期限を守っているかや授業中の挙手の回数といった行動で判断する場合が少なくない。

 「子どもの様子を見ていれば主体性を評価できるはずだ」との意見も聞かれる。しかし評定は内申点に直結し、高校や大学の入試に影響を与える。それだけに生徒や保護者から説明を求められるケースは多いといい、できるだけ客観的なデータを基に評価しようとする教員がいるのは一定理解できる。

 そもそも主体的な態度をA、B、Cで評価すること自体に無理があるのではないか。期限内に宿題を出したり、数多く手を挙げたりすれば主体性が高いと言えるのか、現場の意見は分かれる。不登校の子どもが不利になる傾向も指摘されており、見直しは妥当と言える。

 文科省の案によると、観点別評価を「知識・技能」と「思考・判断・表現」の二つに再編する。主体的に取り組む態度については特に良ければ加点するか、総合所見欄に記すとした。加点する場合に評定でどう考慮するかは今後議論する。知識面に偏重した評価にならないような工夫も求められる。

 多くの学校が学期末ごとに通知表を作成しているが、文科省は学年末だけにすることも可能だと示した。教員の負担軽減の一環という。

 岐阜県美濃市が全市立小学校1、2年生の通知表廃止を決めるなど評価の在り方を見直す自治体も出てきた。重要なのは、子どもの成長を丁寧に見て授業の改善につなげることだ。教員の指導力向上と併せた議論が欠かせない。