私たちは、日本にいてはいけないのですか?
豊岡市でボランティアの日本語教室を運営する岸田尚子(たかこ)さんはその言葉に驚かされた。昨年夏の参院選以来、全国で外国人に厳しい視線が向けられていることは、岸田さんから日本語を学ぶ人たちにも伝わっている。政治家や、政治を目指す者が発する点も不安をかきたてる。
想像してほしい。「日本人の不法行為に厳罰を」「日本人に仕事を奪われる」-。人々がそう叫ぶ国がもしあれば、あなたはそこに住み、働きたいだろうか。
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岸田さんは市国際交流協会を経て2012年に外国人支援NPO「にほんご豊岡あいうえお」を立ち上げた。「私がパソコンの操作で困っていると、得意な人が教えてくれる。母国では職歴を積んだ人たちなので、支援と言うより、同じ地域に住む持ちつもたれつの関係です」
豊岡市街から離れた旧竹野町では全国からの移住者と住民の交流会に、旅館などで働くインドネシア人やミャンマー人も顔を見せる。
交流会は、竹野への移住希望者に空き家情報などを提供するNPO法人「たけのかぞく」が主宰する。自らも移住者である理事長の丹下芙蓉(ふよ)さんは「家族を自国から呼び寄せた外国人もいる。まだ日本語が十分に話せない子どもも、小学校で友だちができたと聞いてうれしかった。国内の移住者も含め、この町で幸せに暮らしてほしい」と話す。
■誰のための「共生」か
人口約7万5千人の豊岡市に住む外国人は約1100人、1・6%を占める(24年6月末時点)。旅館や介護施設、漁業、工場などで働く。日本全体の外国人比率3%よりは低いが、19年末に1%を超えてから増加基調にある。
市は近年、多文化共生を掲げ、性別によって働く機会や地域での役割に格差が生じるジェンダーギャップの解消や、外国人との共生に取り組む。外国人支援のNPOを経て現在は市内で日本語教室を営む河本美代子さんは「二つのテーマは根底で通じる」と指摘する。若い女性は性別格差が残る街を、外国人は異文化を受け入れない街を、住み働く地に選ばないだろう。
河本さんは企業から依頼され、外国人従業員に言葉や生活習慣を教える。「ステンドグラス豊岡」と銘打ちそれぞれの個性をブログで紹介するとともに、企業の受け入れ窓口のネットワーク作りにも取り組む。外国人に仕事の手順を丁寧に説明することで社内全体のコミュニケーションも良くなった例を聞くという。
「多文化共生」という言葉には、現実の不平等を覆い隠すきれいごととの批判もある。だが生まれ育った多様な文化を尊重し、ともに生きる理念は、地域社会の持続性を高め、より豊かにするのではないか。
■「日本望む」と限らず
外国人が日本で働く制度は27年度に大きく変わる。現行の技能実習は転職を認める「育成就労」となり、経験を積めば家族を日本に呼べる「特定技能2号」にも移行できる。両制度で政府は28年度末までに最大123万人の受け入れ構想を描く。
しかし門戸が広がっても、若年層の東京流出と同様に、外国人材も東京や、日本より受け入れ条件の良い他国を志向しても不思議はない。「途上国の人材は先進国の日本を望む」という過去のイメージのままでは、日本が選ばれなくなる。
外国人が急増し、住民との摩擦が起きている自治体は少なくない。豊岡での取材では「地域でともに生きる存在」との見方が印象に残った。だがそれは、まだ外国人住民が少ないからとも言える。受け入れ施策が遅れて弊害が生じる前に、全国で日本語の教育機会や地域との交流の場を増やすべきだ。
日本の総人口に占める外国人比率が70年代には10%台に達するとの試算もある。外国人が近隣に住んでいるのが当たり前になる時代を見据え、違いを受け入れながらともに暮らせる環境づくりを急ぎたい。























