日本の国旗を傷つける行為に刑罰を科す日本国旗損壊罪法案が、自民党と日本維新の会などの賛成多数で衆院を通過した。
どんな行為を裁くのかが曖昧で、立法を必要とする根拠も薄い。個人の主観を罪に問うことは憲法が保障する「内心の自由」や「表現の自由」に抵触し、国民を萎縮させる。不要なうえに弊害しかない法案は撤回、廃案とするべきだ。
法案は、処罰対象を「人に著しく不快、嫌悪の情を催させる方法で公然と国旗を損壊、除去、汚損した者」と規定し、2年以下の拘禁刑、または20万円以下の罰金を科す。自民、維新、国民民主、参政の4党が共同提出した。不快や嫌悪の度合いは人それぞれに異なり、個人の主観の問題である。提出者側は「客観的事情を総合的に勘案し、社会通念により判断される」と説明するが、それこそ客観性に欠ける。
法律をつくるには根拠となる「立法事実」が必要だが、国旗があちこちで燃やされたり破られたりしている状況にはない。提出者が示した過去の4事例は、いずれも現行の器物損壊罪などで対応していた。
損壊罪の創設は高市早苗首相の持論で、昨年10月の自民と維新の連立政権合意書にも明記された。首相は「外国国旗に損壊罪があるから、日の丸にも必要だ」と主張するが、外国の国旗を傷つけることは外交に影響し、国益を損なう恐れがあるからで、同列には論じられない。
どんな行為が処罰の対象になるのかは衆院審議を経ても判然としなかった。ただ国旗は国の象徴であるからこそ、それを傷つける行為は国家に対する強烈な抗議になりうる。政府を支援するために国旗を損壊することは考えにくい。損壊罪の創設は、政権への批判や抗議を狙い撃ちするものと受け止められ、思想・信条の自由にも抵触しかねない。
付帯決議で、国旗への政治的意見や芸術表現は処罰対象にしないと明記したが、法的拘束力はない。政府や捜査当局による拡大解釈の余地があり、恣意(しい)的な運用の懸念が残る。
法案は「国旗を大切に思う国民感情」の保護が目的とされる。だが、刑罰で縛ろうとすれば、国旗に親しみを感じている人にも「国旗には安易に近づかないでおこう」とする意識が働くのではないか。
衆院本会議の採決では、損壊罪に反対してきた野党だけでなく、法案提出に加わった国民、参政両党までもが与党の強引な国会運営に反発し欠席した。民主主義社会の根幹を揺るがす問題を抱えた法案であり、強引な成立は許されない。少数与党の参院で、問題点をさらに明確にする論戦を求める。























