新型コロナウイルス禍は、感染症の世界的大流行(パンデミック)を抑止するには国際協力が欠かせないことを教訓として残した。だが今、世界の公衆衛生体制は後退の危機にある。先進国が中心となって体制の強化を急がねばならない。
公衆衛生が脆弱(ぜいじゃく)化している要因の一つに、トランプ米政権の「自国第一主義」がある。発展途上国の感染症監視や衛生対策を支援してきた米国際開発局(USAID)を廃止し、国際的な保健施策を進める世界保健機関(WHO)から脱退した。
アフリカのコンゴ(旧ザイール)東部でエボラ出血熱の感染拡大が止まらないのは、政府軍と反政府勢力との紛争に加え、USAID廃止などによる初動の遅れが指摘される。国際社会は現地の実態を調査し、必要な支援を再開させるべきだ。
WHOによると、今年4月以降、コンゴでは1500人を超える人がエボラ出血熱に感染し500人超が死亡した。一方で検査や治療などの医療体制は逼迫(ひっぱく)し、既存の治療施設の病床使用率は約9割に達した。WHOは緊急事態を宣言している。
今回確認された「ブンディブギョ株」に対する承認済みワクチンはなく、治療薬を調べる臨床試験が始まったばかりだ。パンデミックに発展する可能性は低いとされるが、各国がどのような協力体制を築けるかは将来の流行時の試金石となる。
日本の対応も問われる。政府はエボラ出血熱など最も危険度の高い「1類感染症」に備えるため、国内の医療提供体制の強化を図る。だが、感染予防の実効性を高めるには国際的な体制構築を主導する必要がある。
ワクチンに対する不信感が広がっているのも見過ごせない。
トランプ政権は、ワクチン懐疑派のケネディ氏を厚生長官に任命するなど接種に後ろ向きな政策を取る。フロリダ州は、水痘(水ぼうそう)やはしかを含む全てのワクチン接種義務を廃止する方針を示し、批判を浴びた。公衆衛生の先進国による方針転換の影響は計り知れない。
日本でも新型コロナワクチン接種による健康被害への不安は根強い。次の流行に備え、政府は実態の検証と説明を尽くし、疑念を払拭してもらいたい。























