埼玉県川口市で先月、ケアマネジャーの60代女性が訪問先の住宅で住人の男に刺殺された。ケアマネは介護保険法に基づく専門職である。介護サービスの利用者や家族から理不尽な要求や不満などをぶつけられ、ハラスメントや暴力にさらされるリスクは以前から指摘されてきたが、死亡者を出す事態となった衝撃は計り知れない。社会の高齢化が加速する中、訪問介護の安全確保に向けた対策を急がねばならない。
事件は6月1日に発生した。男は高齢の母親と2人暮らしで、ケアマネの女性は母親の支援を担当していた。男は「女性を刃物で刺した」と110番通報した後、自ら首を切って死亡したとみられる。「お金をだまし取られる」と話したといい、埼玉県警は一方的な思い込みにより犯行に及んだとみている。捜査による全容解明が待たれる。
ケアマネは全国に約18万人おり、介護が必要な高齢者の心身や生活の状況を把握し、自治体や事業者と調整しながら個々の「ケアプラン」を作成する。その上で訪問介護やショートステイなどの介護サービスが提供される。ケアマネの資格を得るには介護福祉士など一定の実務経験が必要とされ、多くは民間事業所や特別養護老人ホームに勤めている。
単身や少人数で利用者宅を訪れるケースも多い。日本介護支援専門員協会が2024年に実施した調査では、ケアマネの3割超が過去1年間に暴言や侮辱、根拠のないクレームなどのカスタマーハラスメントを経験していた。身体的な暴力があったとする回答もあった。
地域の暮らしを支える人たちに危害が及ぶような状況を放置するわけにはいかない。ケアマネが1人で抱え込むことがないように事業所や自治体が実態を把握し、適切に対処することが求められる。
今回の事件を踏まえ、厚生労働省は、ケアマネらが利用者宅を複数人で訪問する際の経費を補助する支援策を全国の自治体に通知した。
ただ、そもそも介護の現場は人手不足が深刻化しており、複数人の職員による訪問を実現するのは容易ではない。介護職のなり手が増えない背景には仕事の過酷さがある。担い手の善意や我慢に頼るのではなく、国や自治体は職場環境の改善や継続的な賃上げなどの人員確保策に本腰を入れるべきだ。
事件を未然に防ぐには、医療機関などとの連携も欠かせない。利用者の暴言や暴力の陰に健康問題などが潜んでいる場合は早期に把握し、適切な窓口につなげる。治療が必要なら医師に連絡する。介護する家族を孤立させないためにも、地域全体で見守る体制を構築する必要がある。























