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 政府が再生可能エネルギーの「切り札」と位置付ける洋上風力発電の計画を巡り、経済産業省が支援制度の強化を決めた。建設費に充てる支援の上限額を、従来の1キロワット当たり約20万円から最大3・5倍の70万円に引き上げる。支援対象の候補は、電力会社や商社などの企業連合が青森県から新潟県の日本海側5カ所と長崎県沖で進める六つの計画だ。

 これまでに政府は6県9海域の大規模計画で事業者を決めたが、昨年8月、三菱商事が秋田、千葉両県沖の3海域から撤退すると表明した。建設費が2倍以上に膨らんだのが理由だった。支援強化が撤退の動きをほかの事業者に波及させないための歯止めとなるか、注視したい。

 火力発電は、地球温暖化の原因になる温室効果ガスの一つ、二酸化炭素(CO2)を排出する。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、産業革命前からの気温上昇を2度、できれば1・5度に抑えるため、21世紀後半に温室ガス排出を実質ゼロにするとの目標を定めている。

 日本政府が火力の削減と再エネの拡大を図るのは、この目標に歩調を合わせたものだ。2050年までの実質ゼロに向け、国内の温室ガス排出量は減少傾向にあるものの、決して順調とは言えない。今年発表された24年度分の排出量は目標ラインを1500万トン超過した。温室ガス排出を着実に減らしていくには、洋上風力などの活用が欠かせない。

 政府のエネルギー基本計画は、23年度に23%だった再エネを40年度に4~5割程度にすると掲げる。データ不正問題で中部電力浜岡原発の再稼働審査申請が取り下げられるなど原発の再稼働拡大が進まず、中東情勢の悪化で原油の供給体制が不安定化する中、再エネへの期待はさらに高まっていくとみられる。

 洋上風力建設の課題の一つは、資材を輸入に頼り、円安などの影響を受けやすい点だ。風車の価格だけでもこの数年で1・5倍になった。経産省は今年7月、デンマークの風車製造大手が北九州市で進める拠点整備に対し、最大約13億円を支援すると発表した。設備の国産化を進めるのが狙いという。こうした試みを広げる必要があるだろう。

 ただし、生態系などに影響するとして各地で住民の反対を受ける大規模太陽光発電所(メガソーラー)と同様、洋上風力にも環境面での懸念がある。わずかな人工物でも海洋環境、特に生物相に影響を及ぼす恐れがあると専門家は指摘する。

 まずは環境影響に関する的確な調査と慎重な評価が求められる。科学的なデータをもとに、できる限り環境に配慮した洋上風力の拡大策を模索していかなければならない。