私たちは滋賀県東近江市の旧永源寺町で、「チーム永源寺」の会議をのぞいている。
医師に看護師、作業療法士、薬局の薬剤師。それから民生委員、ケアマネジャー、消防本部や市役所の職員、ボランティアの住民もいる。いろんなつながりで集まったメンバーが毎月、支援が必要な住民の情報を持ち寄り、地域での見守りに生かしている-。
と、聞いてやってきたものの、会議は定例の顔つなぎという雰囲気で私語も多い。事務局はなさそうだ。いつもこんな緩い感じなのだろうか。心もとなく思いながら、住民のメンバーに話を聞いてみた。
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「チームの会議では、何ということのない話が多いですよ」。古民家の広い応接間で、九里(くのり)重義さん(68)がゆったりとした口調で言った。
「参加者が言いたいことを言い合う。そういう関係がいいんですよ。いろんなつながりが交差して、自然と地域で見守るという雰囲気が出てきてるんじゃないんかな」
旧永源寺町では年間60人ほどが亡くなり、その半数は住み慣れた自宅で最期を迎える。全国平均は全死者数の1割ほどで、旧永源寺町の在宅死の高さは際立っている。
九里さんが一枚の名刺を取り出した。肩書に「おいでぇな高野 代表」と記されている。「高野」はここの地区名だ。2017年に有志13人で立ち上げたグループだという。カラオケやグラウンドゴルフ大会、地域史の勉強会などを企画し、地域の人たちが集まる機会を増やす。
「行事を通して、皆の体調とか暮らしぶりとかが分かるんです。そんな話をね、チームの会議で世間話をしながら花戸(はなと)先生に伝えるんです」
住民らに「花戸先生」と頼られる、永源寺診療所所長の花戸貴司医師(49)がチームのけん引役を務める。
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普段から顔を合わせ、話がしやすい関係。それが、いざというときに威力を発揮する。チーム永源寺ってそういう集まりなのですか? 花戸医師に聞いてみた。
「例えば、認知症になってもやれること、できることはいっぱいある。家や地域にはその人の役割や居場所があるんです。病気になっても、その人なりの生活を続けた方がいい。それをいろんな職種の人で、地域で支えようというのがチーム永源寺なんです」
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