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「目の前で人が生まれたり、見送ったりできる仕組みができたら」と語る菅原健介さん=神奈川県藤沢市 利用者に話し掛けるスタッフ。小さな空間はいつも温かい雰囲気だ=神奈川県藤沢市 利用者とスタッフ。ご近所同士の付き合いが続く=神奈川県藤沢市
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「目の前で人が生まれたり、見送ったりできる仕組みができたら」と語る菅原健介さん=神奈川県藤沢市

利用者に話し掛けるスタッフ。小さな空間はいつも温かい雰囲気だ=神奈川県藤沢市

利用者とスタッフ。ご近所同士の付き合いが続く=神奈川県藤沢市

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  • 利用者に話し掛けるスタッフ。小さな空間はいつも温かい雰囲気だ=神奈川県藤沢市
  • 利用者とスタッフ。ご近所同士の付き合いが続く=神奈川県藤沢市

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利用者に話し掛けるスタッフ。小さな空間はいつも温かい雰囲気だ=神奈川県藤沢市

利用者とスタッフ。ご近所同士の付き合いが続く=神奈川県藤沢市

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 10月から11月にかけて掲載したシリーズ「いのちをめぐる物語」の第3部「つながりましょう」(全20回)では、認知症や終末期の人を地域ぐるみで支える現場を訪ねてきました。各地で出会った人たちの中から、地域とのつながりを重視し全国的に注目されるサービス付き高齢者向け住宅「銀木犀(ぎんもくせい)」の下河原忠道さん(48)=千葉県=と、団地の一室を利用したユニークな小規模多機能型介護事業所を運営する「ぐるんとびー」社長、菅原健介さん(40)=神奈川県=のインタビューをお届けします。

 -「ぐるんとびー」では、どんなことをしているのですか?

 「団地の6階の部屋を借りて『ぐるんとびー駒寄』という小規模多機能型居宅介護事業所を運営しています。団地内や地域の高齢者が通ったり、宿泊したりしています。そのほかにケアプランセンターと訪問看護ステーションがあります。『ご用聞き』もしていて、買い物の同行や代行、草刈り、掃除などを有料で引き受けています。また、地域の子どもたちに毎週、専門家が無料でスポーツの楽しさを教える『スポトレ』などの活動も始めました」

 -高齢者の支援だけではないんですね。

 「僕らのやってることって、地域包括ケアに近いんじゃないかな。新しい時代に合わせて、住民自治の再構築をしようと思っているんです。介護事業をやっているつもりはなくて、まちづくりなんですよ」

 -そうした視点は、どのようにして芽生えたのですか?

 「東日本大震災ですね。理学療法士として病院に勤めていたのですが、震災発生の直後にボランティアグループのメンバーとして被災地に入り、宮城県気仙沼市などの避難所で医療や生活支援チームのコーディネーターなどを担当しました。住み込みで24時間対応です。結局、勤務先の病院を辞めて、9カ間、被災地に滞在しました。被災地では、みんなが人としてできることをするわけです。例えば、医者も炊き出しのおでんを運びます。人として動き、その中で専門性を一部、発揮できればいいのではないかと思いました」

 「僕らは避難所に入って、困った人の相談に乗っていました。あらゆる相談に対応しました。『車がない』って言われたら車を探す。被災者の声を傾聴しているといろいろな声が出てきます。それに対して、こちらの活動の内容を特化すると、どんどん穴があいてしまう。本当はその穴を埋めていくことがすごく大事なんです」

 -ぐるんとびーは2015年の設立です。どうして団地に注目したのですか。

 「震災当時、避難所には多くの人が集住していて『困った』という声が聞こえやすく、こっちも見えやすかった。人が集まっていた方が、お互いに支え合うことがしやすいなあって思ったんです。在宅に分散していると、どこに誰がいるのか調査するのも大変だし、SOSを出しても物理的に距離がある。なので、この避難所機能は使えるんじゃないかと。24時間、看護師らがいると住民も安心しますしね」

 -安心が大切なんですね。

 「生活の中の不安を取り除くことが必要なんです。例えば、うちの事業所に通っている認知症の女性がスタッフじゃなくて、僕のところへ来ることが多くなったりするんです。不安になる回数が増えたんですね。不安を緩和するには、圧倒的に信頼できる人がいるかどうか。女性とスタッフにそうした人間関係ができていないと感じ、話をしたことがあります」

 「東日本の被災地でも、ベースにあるのは『信頼』でした。楽しいことを共有すると記憶に残るし、つながりを取り戻すことで人は元気になる。つながる相手は、人だけではありません。文化やプールなどのスポーツ、やりたいことも対象です」

 「認知症も特別なことではないんです。僕らも地震が起きるとワーッとなるじゃないですか。でも、普段の訓練で何が起きるか認知できていれば対応できますよね。それと同じで認知機能が落ちるから不安になるわけで、不安な状態に陥らなければ『普通の人』です。だから人間関係ができると、『この人が言うことは本当だな』となるんですよ。ただ、時間がたつと不安は怒りに変わってしまう。困っていたらすぐに対応することが大事です。集合住宅だとその点は強いですね」

 -この先、どんな展開を思い描いていますか。

 「来年3月、近くの集合住宅の1階に(医療ケアが必要な患者を支援する)看護小規模多機能型居宅介護事業所を開設する予定です。そこでは利用者のみとりもします。地域交流スペースや駄菓子屋さんも用意しようと思います」

 「まちづくりって、行き着くところは教育だと思うんです。教育に何が必要かというと、『生』とか『死』だと思います。生まれてくるところも、死んでいくところも、見なくなっちゃったじゃないですか。目の前で人が生まれたり、見送ったりできる仕組みができたらいいですね」(聞き手・紺野大樹)

     ◇     ◇

【「ぐるんとびー駒寄」】 神奈川県藤沢市大庭にある都市再生機構(UR)の住宅「パークサイド駒寄」(約260世帯)の6階で運営する小規模多機能型居宅介護事業所。定員29人で、通所の場合は午前9時から午後6時。利用者は宿泊もできる。社長の菅原健介さんは中学、高校時代をデンマークで過ごした。「ぐるんとびー」という名前は「地域と人の思いをぐるんと結ぶ」という意味と、デンマークの教育思想家グルントヴィが由来という。運営会社は社会福祉法人のコンサルティング事業なども手掛ける。

2019/12/4
 

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