みなさんは自分のクラスに「転校生」がやってきた経験はあるでしょうか。「週刊少年サンデー」(小学館)で連載している『廻天のアルバス』の原作担当・牧 彰久さんが手がけた『ヒミツガール・トップシークレット』は、本名を明かせない転校生とガリ勉の主人公によるドラマを描いた一作です。以前牧さんのX(旧Twitter)にポストされると、7000を超える「いいね」が寄せられています。
■素性を明かさない謎の転校生…その正体とは
恋愛や部活に目もくれず、ただ勉強に打ち込んでいる高校生の「日向和彦」。ある日、和彦のクラスに「山田花子」という本名を明かさない女子生徒が転校してきました。仮名であることや住んでいる場所、趣味といった個人情報は一切喋らず、不気味に思った女子たちは花子から自ずと距離を置くようになります。
一方で、男子グループでは可愛いと評判でしたが、和彦は一切の興味を示しません。その結果、勉強にしか興味を示さない様子の和彦も、不審に思われクラスメイトから距離を置かれています。それでも和彦は「何を言われていようが気にしない」「オレは絶対に失敗できないんだ!!」と自身を追い込むのでした。
そして、いつものように和彦が図書室で勉強していると、花子がやってきて「勉強、お好きなんですね!」「どうしてそんなに頑張ってるんですか!?」と声をかけます。だが頑なに理由を言わない和彦に花子が「つまんない人」と一蹴すると、和彦は怒りから花子と口論になるのでした。
その後、騒がしくしてしまったことで図書室を追い出され、花子は和彦に「今の和彦さんがとても辛そうに見えて」「高校生活って…もっとキラキラして楽しいものだと思っていたから」と伝えます。さらに2人でゲームをしようと前置きし、「私の招待(ヒミツ)を暴いてみてください!!」と提案するのでした。
後日、担任の先生に花子の本名を尋ねても応えてもらえず、無性に花子の正体が気になる和彦は、仕方なく彼女を尾行することに。しかし、あっけなく花子にバレてしまい、2人は流れの中で一緒に下校したところ、花子の提案で喫茶店に寄ります。喫茶店で注文したパフェを食べた花子はあまりの美味しさに涙を流して喜び、その様子を見ていた和彦は思わず笑みをこぼすのでした。
すると、「やっと笑ってる所 見れました」と笑顔で伝える花子。途端に和彦は幼少期に経験した嫌な出来事を思い出し、表情が曇り始めました。そしてお会計した後、和彦が「このゲーム オレはもう降りるよ」「もうオレには関わらないでくれよ!!」と告げると、花子は泣きながら「君とまた二人で遊んでいたかったんだよ」と言って、去り際に「ごめん 和ちゃん」とつぶやきます。
「和ちゃん」という呼び名を聞き、和彦は過去の嫌な出来事に関係する「向井千尋」というひとりの女性を思い出します。幼い頃、千尋と和彦はよく一緒に遊んでいましたが、宝探しをするなかで千尋は木から転落して昏睡状態に。自分の責任だと思った和彦は千尋を助けるため、医者になることを決意します。そういった背景があって毎日勉強に励むようになったのです。
翌日、担任の先生から「しばらく山田は休学する」「あの子は長く入院していた」という話を聞くと、和彦は千尋がいる病院にダッシュ。そして、病室の扉を開けると、そこには花子という仮名で近づいてきた千尋の姿がありました。そして、和彦の顔を見ると、「正解!!」と伝えます。
2人は話を交わし、のちに千尋は半年前に意識を取り戻していたことが判明します。復活後に和彦に会いに行ったところ、あまりにも重苦しい顔つきだったために、千尋はちょっとでも和んでもらおうと一計を案じたとのこと。
最後に千尋が「どうしてあんなに勉強してたの?」と質問すると、和彦は「もういいんだ」「オレの中だけのヒミツにしておく」と応えるのでした。
読者からは「心が温まった」「千尋の反応がいちいち可愛い」などの声が。そこで作者である牧彰久さんに、同作について話を聞きました。
■初めて本格的に描いたラブコメが新人賞の受賞作品に?
-同作を描いたきっかけを教えてください。
この作品は元々新人賞に向けて作ったものでした。ちゃんとしたラブコメ作品を描いたのは初めてだったのでチャレンジングなものでしたが、ありがたいことに受賞しまして、とてもうれしかったです。
-同作で特にお気に入りの場面を。
やはり一番は最後の病室の扉を開く見開きでしょうか。今読んでもグッと感情をかき立てるようなものが描けてるんじゃなかろうか…と思っています。
-現在「週刊少年サンデー」で原作を担当された『廻天のアルバス』が連載中ですが、毎週次の話を作っていくなかで特に大変なことや日々の向き合い方をぜひ教えてください。
最近になって徐々に慣れつつありますが、週刊連載はものすごいスピードで日々とお話が進んでいくのでなかなか気が抜けないですね。原作だけの私がこうなので、本当に絵もお話も書かれている先生方を尊敬します。そんな毎日ですが、いろんなインプットや、少しでも体を動かすこと、あとちゃんと寝ることは大事だなと思っています。
-読者にメッセージをお願いいたします。
いつも応援ありがとうございます、本当に皆様のおかげで頑張れています。この先も面白いものをお届けできるように頑張りますので、引き続き『廻天のアルバス』をよろしくお願いします!!
(海川 まこと/漫画収集家)