30歳になった飛鳥(木竜麻生)は高校3年生の時に別れた親友と再会し、ずっと蓋をしていた宇宙への思いが再燃する ©️NHK
30歳になった飛鳥(木竜麻生)は高校3年生の時に別れた親友と再会し、ずっと蓋をしていた宇宙への思いが再燃する ©️NHK

9月8日から夜ドラ『いつか、無重力の宙(そら)で』が放送をスタートする(NHK総合・よる10時45~)。本作は、高校時代に「一緒に宇宙に行こう」と夢を語り合った天文部の女子4人組が十数年ぶりに再会し、超小型人口衛星を作って宇宙に飛ばす夢を追いかける青春ストーリーだ。

30歳になり、それぞれ目の前の現実に向き合っていた4人の女性たちがもう一度「宇宙への夢」を思い出し、二度目の青春を謳歌しながら自分を取り戻していく。主人公・望月飛鳥を演じる木竜麻生からコメントが届いたので全文掲載する。

■親友との再会で、蓋をしていた「宇宙」という夢の箱が…

ーー望月飛鳥とは、どんな人物?

木竜麻生(以下、木竜) 物語のはじまりで飛鳥は社会人9年目。上司と後輩の間に挟まれて、日々目の前の仕事に打ち込んでいます。周囲の人たちが求めることを察知しようと頑張ってしまうし、「自分がこの立ち位置にハマればうまく回るんだろうな」ということを常に考えている人だと思います。

だからつい、ひとりで仕事を抱え込んでしまいがちだけど、これも飛鳥が30歳までの人生で自然と身につけた処世術なのかも。彼女なりの経験則とコミュニケーション術で、意外とそつなく、普通に生きてこられた人なんじゃないかと想像しています。

そんななか飛鳥は、高校時代の天文部の仲間たちと再会して「ああ、私そういえば宇宙が好きだったんだ」と思い出します。高校を卒業してからの飛鳥は、蓋を開けられるようなところからはかなり離れた場所に「宇宙」の箱を置いてきていたんだと思います。

ところが、ずっと連絡の途絶えていたひかり(森田望智)が目の前に現れて、その箱の蓋を開けられてしまいます。ひかりや天文部の仲間たちとの再会をきっかけに、これまで蓋をしてきた飛鳥のなかの熱量が少しずつ少しずつ、放出されていく。そのプロセスを丁寧に演じたいと思いました。

■30歳。無理して持たなくてもいいものを手放していける年頃

ーードラマのなかの飛鳥は30歳。演じられる木竜さんも同世代ですが、「30歳」という年頃についてはどんな思いがありますか?

木竜 私が高校生ぐらいの時は、「30歳」と聞くとものすごく大人だと思っていました。でもいざ自分がその年齢になってみると、そうでもなくて。先日、高校生時代の飛鳥を演じる田牧そらちゃんと30歳のイメージについて話していたときに、そらちゃんに「私を見て。30歳ってこんなもんだから」と言ったぐらいなので(笑)。

でも、人って、その時はその時なりの、精いっぱいの悩みを抱えているものなんだなと実感しています。私の場合は30代に入った頃から、あきらめ……と言ったら語弊があるかもしれませんが、無理して持たなくていいものを手放していく作業ができるようになりました。自分の「容量」を知ることで、10代の頃よりはもう少し自分のことを大事にできる人間になれているかな、なりたいなと思っています。

■大人だからこそ抱える「重力」が少しだけ軽くなる15分

ーー第1話で天の声が「大人になるにつれ、この世界の重力は少しずつ大きくなっている……気がする」と語りますが、このドラマのなかで描かれる「重力」の正体は、なんだと思いますか?

木竜 ドラマ冒頭の飛鳥でいえば、「No」と言えないとか、「大丈夫、大丈夫」とつい笑顔で言ってしまう感じとか。生きていくなかで、自分の選択や、いま目の前にある仕事、人間関係、それから自分自身の思考や行動から、知らず知らずのうちにちょっとずつ(自分の本当の思いとは離れて)大きくなっているのが「重力」なのかなと思っていて。

誰かに「やれ」と言われたわけでもないのに、やってしまう。自分が置かれた場所で生きていくうえでの「折り合いのつけ方」みたいなものも、「重力」と言えるのかもしれません。そうした重力を抱えつつ、飛鳥は人工衛星という目標に向かって突き進んでいきますが、この物語は「夢を持って実現に向かえば、全てが軽くなる」と描いているわけでもないと思っています。

昨日より今日のほうが少し軽い気持ちになれたり、以前よりもちょっとだけ「重い時間」が短くなるとか。そのぐらいでも十分だったりするのではないかな。何か大きなことではなく、小さな変化の積み重ねで自分の機嫌をとれるようになることが大事なのかなと思っています。飛鳥としては、小さな進み方でも、彼女の生きる先が少しでも光っていくならば「上出来!」と思います。

■登場人物たちに小声で「がんばれ」と言いたくなる作品

ーードラマの語り、柄本佑さんの「天の声」はいかがですか?

木竜 ずっと台本の「天の声」の部分を、想像で柄本佑さんの声を当てながら読んでいたので、出来上がった映像で初めて柄本佑さんの声を聴かせていただいて「本物の天の声だ!」と思って。コミカルな部分と、距離感を保って話す部分と、シーンに応じてすごく柔軟にメリハリをつけていただいて、純粋に感動しました。天の声が飛鳥の気持ちを代弁してくれたり、寄り添ってくれるシーンも多いので、柄本佑さんの声の表現に大きく支えていただいています。

ーー最後に、視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。

木竜 月曜日から木曜日までの夜の15分、視聴者の皆さんの生活に寄り添うような時間帯に放送されるので、何も考えず、ふわっと見ていただけたら。「小さな一歩」を積み重ねていく登場人物たちを、大手を振って応援するというよりは、小声で「がんばれ」と言いたくなるような作品になっていたら、と願って演じました。皆さんの生活のなかに私たちがフィットしていくように届けられたら、うれしいです。

◇  ◇

夜ドラ『いつか、無重力の宙で』
2025年9月8日(月)~10月30日(木)
※毎週月~木(総合)よる10時45分各話15分 <全32回/8週>
【作】武田雄樹 【音楽】森優太 【主題歌】吉澤嘉代子「うさぎのひかり」
【出演】木竜麻生 森田望智 片山友希 伊藤万理華 奥平大兼
    田牧そら 上坂樹里 白倉碧空 山下桐里/鈴木杏 生瀬勝久ほか
【天の声(語り)】柄本佑

(まいどなニュース特約・佐野 華英)